TALES

□慰みの楽園
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「…ここは、どこ…?」


見渡すかぎりの広い花園。
揺れる草木。さえずる小鳥たち。
なんとも平和な場所だ。
近くには、少女のお友達が気持ち良さそうに昼寝をしている。
そのお友達の頭を撫でながら、今まで何をしていたのかを思い出す。


「そうだ!私…、アニスと…戦ってて…。」


頬に涙がつたう。


「負けちゃった…!仇…討てなかった…。」


拭っても止まることを知らないソレは、いつまでも少女の頬を濡らした。
生暖かい感触がし、顔を上げるとお友達が心配そうに見ている。


「大丈夫…。心配しないで…。」


そっと抱き寄せると、お友達は嬉しそうに喉を鳴らす。
顔を押し付けるようにすると規則正しい心音が聞こえる。
その音に誘われ、少女は眠りにおちた。



瞳を開けると、いつの間にか夜がふけていた。
それでも完全な闇はなく、満天の星空と月によって 神秘的に照らされている。
よく見ると、セレニアの花以外にも照らされているものが…。



「イオン様!!」


深緑の瞳を持ち、幼い顔立ちながら強い意志を感じさせる不思議な少年。それは、彼女のよく知る人物だった。
名を呼ばれた少年はゆっくり振り返り、変わることのない微笑みを浮かべた。


「こんばんは。アリエッタ」

「イオ…ン…様。イオン様!」



遥か彼方の別世界で事実を知り、ようやく少女の復讐劇が幕を閉じた。彼女だけではなく、他の者も救われているのかもしれない。
この楽園で……




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