過去top2

□足跡
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枯れ木の下、一面の白。
汚れをしらないその上には
一筋に通ったナニカを引き摺る跡と人の一部が転がる。

「また人を喰ろうたか」

西国の鬼がそれを見つけた。
鮮やかな着物から伸びる手には跡を付けてくる最中に拾っただろう人の足が生々しい。
「人を愛でる余り人を口にする。文字通り鬼畜なやつだ」

「…人を喰らえば人の気持ちが分かるようになるでしょう」

こちらを振り返る白面の口には未だに乾かぬ鮮血。

「それで喰った今、何か分かったのか?」

その場所から根を張るように
動かない千鶴に近寄った千景は、千鶴が握りしめている胴体部を引き剥がし
徐に穴を掘り始めた。

「……鬼は人となにが違うのでしょうか」

「……」

鈴のように小さな声は
土を掘り返す音で千景の耳には届かない。

「……」

それ程深く空いてはいない穴に、胴体と拾ってきた部分をやや乱暴に埋めていく千景を見つめる。
その目に以前のような光はない。

「お前の食べ残しをこうして俺が毎回始末をしているこっちら身も知れ」

事をやり終え腰を上げた千景は、蒼白な顔で此方を見つめる千鶴と目が会うと同時に溜息を漏らす。

「鬼は力と延命を得手生まれ、そしてその代償が孤独だと俺は思う。

お前は、それが恐ろしいか」


土の付いた手で千鶴の頬に付着している鮮血を擦ると、朱色だったソレは砂利が混じるくすんだ色に変色した。

完全に拭えなかったその汚れ。
今度は着物の袖で拭き始める
、千景の真剣な表情を見た千鶴は昔懐かしい笑みを浮かべて言った。

「綺麗な着物が汚れてしまいますよ?」

「…だったら喰うな。喰う時はもっと上手く平らげろ」

綺麗に拭き取った事に満足するや否や、千鶴の細い手首を掴むと来た道を足跡に沿って強引に引き返す。

ーーー私は大丈夫です。

脳裏によぎる過去は変える事はできない。
奪い方は違うが、この様な姿を奴等に見せたら何と言われるだろう。
(奪った後に捨てる。生殺しをしたのと同然だ)







千景の後悔を比例するように
分厚い雪雲からは、再び雪が降り始めた。



それは二人の足跡に
二度と繰り返す事が出来ぬように封を閉じるのである。






































足跡



















風間×千鶴(鬼畜)

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