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□天満屋事件
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慶応三年12月7日。
佐幕派、陸奥陽之介(むつようのすけ)は紀州藩公用人三浦休太郎を討つ為に総勢15人で天満屋を襲った。
三浦休太郎は、同年11月15日に中岡慎太郎と共に殺害された坂本龍馬の暗殺の黒幕であると疑われたのである。


三浦はその日、天満屋で酒を飲む予定だった。
直後、開かれた襖から姿を表したのは新選組副長助勤斎藤一。諸士調役兼監察の大石鍬次郎(おおいしくわじろう)を筆頭とし、宮川信吉・中村小二郎・中条常八郎・船つ釜太郎。そして梅戸勝之進の計七名である。

斎「会津藩士松平容保公から三浦休太郎護衛の命を承った。」
しかし、護衛する筈の三浦の姿はない。変わりに居たのは紀州藩士三宅精一(みやけせいいち)だった。

宅「三浦は今、外に出ている。直ぐに戻ってこよう」

先に飲み始めていたのか、三宅の面はやや赤く色付いている。戦友の命が危険な時にも酒に手を伸ばし、戻りが遅いことにも心配しない姿は、野暮という所か。(いや、ある意味切れ者の佇まいという率もある。)

斎「では、待たせて貰おう。」
狭い和室に大の大人が八人。
斎藤は座ると、おもむろに己の体に鎖を巻き始めた。戸惑う梅戸に「襲撃に備える」と言い、進められた酒を舐めるように啜った。




三浦が天満屋へ合流し、派手な宴会が始まった。
三浦、三宅、と共に斎藤や大石の酒の量は増え続けてるばかりである。頬を染め、悪酔いはしないが意識が朦朧とし始める斎藤は、先程自身が付けた鎖が邪魔で仕方ない。
そんな中、土州の藩士と言う者が三浦との面会を受請してきた事が伝えられる。

三「分かった。私が行こう」

止める隊士を退けた。
短刀を下げて階段へさしかかり、一、二段降りようと足を出した。


その時



「貴様が三浦か?いや…三宅か?」

言いながら、刺客が部屋に乱入した。そして、息をつく間もなく三浦の顔面を斬りつけた。



新選組も咄嗟に動き、激しい乱闘が始まる。



灯りが消えて視界が悪い上に、酔う斎藤にはあまりにも過酷が状況だった。
だが、無造作に振り回される刃は身に巻いた鎖が自身を守り、移る意識の中で懸命に立ち向かう事が出来る。
けれども、酒の回り集中力の欠如と暗がりで、斎藤は背後への防御をおろそかにしていた。
上から下へ、斎藤の首から背を目掛け光る刃に

「斎藤組長…!!」

咄嗟に刺客を羽交い締めにした梅戸が息荒く叫んだ。



















これが今で言う天満屋事件である。

その後、新選組からは宮川・船津がこの騒動によって亡くなった。また、三浦側にも三名の死者が出た。(三浦は顔の傷だけで致命傷は負ってはいない)

一方で、土州藩士の中には中井庄五朗が新選組に討たれている。彼は、池田屋事件で目撃されている佐幕派の一員であった。池田屋の際は、乱闘には参加しておらず、怪しげな見物人として新選組に目を付けられていたのだろう。


会津藩の命は遂行したが、多大なる犠牲を払った事について。斎藤は酒を飲んだ自身に苛立ちを覚える。
未だに身に絡みつく鎖が、屯所へ帰還する斎藤の足音と共に、小さく鳴いていた。






斎藤の心中のように










9/29クリーニング


堅苦しい文面になりました。
以前、斎藤が鎖を付けて帰還した短編の天満屋事件です。

三浦と斎藤は実は面識がありました。
斎藤は天満屋事件の前に、御陵衛士に潜伏して、機密を新選組へ流して。伊東さんが死んだら「はい、新選組に帰りますよー」とは軽々しくできない立場です。(恨まれるし、怪しまれるし)そこで、近藤さんの命でしばらくの間、三浦さんの家にお邪魔になって。斎藤から山口と名前を変えて新選組へ復帰。

天満屋の時はお互い知らないフリをしていたそうで(^O^)

(天満屋で亡くなった宮川さんか船津さんかどっちかは、近藤さんの身内だったような話もあります)


薄桜鬼の斎藤さんにする為に史実とは少し違う手順と文面です。


長くなりました。
終われ

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