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□紅
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銀で塞がらない傷口と、肺を侵す労咳によって痛めた喉奥。その両方から留めなく流れる鮮血に、畳は赤黒く変色する。
むせかえるような血臭に思わず目をしかめたが、それと同時に、自分を包み込んだ彼女の匂いが僕を安堵へと導く。

『優しい匂いがする』
かすれる声で言った。
伸ばした手を頬にそえると、彼女の手に包まれる。そして頬からつたって流れる涙に、思わず口がほころぶ。


泣き顔も見とれるように美しい。
僕の血で染まっていく彼女の真っ白な寝間着が、まるで上等の紅々を着せているように、彼女の肌に栄えた。


『こんなにも綺麗な君の腕の中で、逝ける僕は幸せ者だ』



新選組の幹部隊士が喉から手がでるほどに欲した彼女を、最後には心を奪って。







僕はまたあの人達の所へ帰る。















9/24オレンジ/花嫁の心

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