過去top2

□武田観柳斎
1ページ/1ページ

新選組五隊組長
武田観柳斎(たけだかんりゅうさい)
甲州長沼流の軍学に通じていた彼は、近藤に重用され、新選組の軍師のような地位を得ていた。
しかし時代は代わり西洋武器が隊の中に導入されると、古流とされた長沼流は時代遅れとなった。

ーーーここに私の居場所はない
武田は新選組に見切りをつけ、倒幕派とされる薩摩藩とひそかに密会を募り、新選組の機密を漏らした。新選組を脱退した後、倒幕派の一員として活動していく為である。

これを知った近藤と土方が
みすみす見逃す筈がない。

この先は、新選組五番隊組長
武田観柳斎粛正した斎藤一の話である。


ーーーーーーーー

日が傾き、月の光が濃くなる頃
土方の部屋に呼び出された斎藤は、張り詰める空気の中、自分に下される待命を飲み込む。

「今夜、武田の薩摩藩移籍を認め、送別会を開く」

「……移籍をお認めになったのですか」

「いや、送別会はあくまで表面。武田は今頃、さっさと屯所を出たくて落ち着かねぇだろうよ、送別会もそっちのけで酒に呑まれぬまま、ここを出て行く筈だ」

残茶が入った湯のみを揺らし、渋い顔をした土方。
斎藤は、この後の言葉が何となく予想出来たのか肝心の所を表に出さぬよう、自分から動く。

「自分がやります」

「武田も才がある。お前と2人っきりになる時間なんか作らねぇ。」

「送別会が終わったら、帰り道をお前と篠原に送らせるようにする。その後はお前に任せる」
「御意」





これから始まる宴席に心動く隊士の中、斎藤は一人その時を待った。











*



武「些か長居をしてしまいましたなぁ。私はこれで失礼させて頂きます」


土方の予想通り。酒を飲まず早々に席を立った武田は準備していた荷物を背に掛け、刀を差し、いそいそと出口へ向かった。

ーーーー斎藤くん、篠原くん、武田くんを送ってあげろ。
何か、心引くものがあるように命令した近藤の声はいつもより張りがない。
そんな些細な仕草を見通した武田は「皆さんで宴席を楽しんで下さい」と頑なに拒むが、土方の一言で、帰りに道中させるほか、仕方がなかった。
(帰り道、斎藤から何かあれば、親しい仲であった篠原に助けを求めればいい)と、注意が欠けているまま、夜道に足を踏み出したのだ。




*




歩いてどのくらいたっただろう。
同行した篠原は、いつ、斎藤が刀に手を掛けるかと息をのんで伺っていた。















竹田街道、銭取橋。
この辺りになると、通行人は一人も見えない。逆に、この橋を渡った先は人通りが多くなる。



(今、やらなくては次はない。)

意を決した斎藤は、目にもとまらぬ速さで抜刀する。


武田の背から鮮血が吹き出した。



声もなくその場に倒れる武田に篠原も慌てて一太刀を加えるが、斎藤の一撃を受けた時、武田は即死していた状態だった。



篠「……斎藤組長、見事な太刀筋…です」


親友とも呼べる武田を、粛正により手にかけた斎藤。
ここで仇討ちとばかりに、刀を斎藤に向けるのは簡単であるが。我が身を案じる分にやむおえない。

篠「……………」


ぎゅっと刀の柄を握りしめる篠原を横目に、亡骸の後始末をしていた斎藤は



「稽古で大口を叩いて奴は、口ほどにもなく脆かったな。」







まるで篠原の心を詠んだのか、太い釘を刺すような言葉を残した。



















菊池明編集「斎藤一の生涯」
を参考にさせて頂きました。
沖田・永倉に継ぐ剣客として、新選組に居た斎藤は、この本によると………結構な仲間討ちを近藤さん(土方さん)に命令されていました。
7番隊隊長 谷三十郎
の不審死も
「犯人は、斎藤と同じ左利きの奴だなぁ」っと、篠原さんが嫌みのようにチクチクいっていましたが。
斎藤は気にせず笑って
「いっしょにすんなよー」と。
…斎藤さんが薄桜鬼の沖田に見える。


またしばらく最新できないので長めに書きました。
Mさん、コメントありがとう御座いました。
恐縮ですが、ここで軽くお返事させて頂きました。


8.4ゆかたの日

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ