過去拍手

□それは華のよう
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『梅』

そう名乗り人斬り浪士組集団の屯所である前川邸にやってきた大輪の華。
今まで芹沢が溜め込んだ返済金を頂く為に何人か男が来た事はあった。が、数時間後には頭に大きなタンコブを付けるか、大量の血を流しながら出て行くのが今までのお決まりなオチ。

…だがあの時だけは違った。目的は返済金で変わりは無いが、前川邸に送られてきたのはむさ苦しい男ではなく、女。
「梅と申します」と上品な声で上がり込んできた女の匂いに屯所の中に居た男は落ち着きが無くなる。無理もないだろう、色白の艶やかできめ細かい肌はなんとも言えない匂いを発する。

「あの人なら芹沢さんからお金、返して貰える可能性があるんじゃない?」

「お前な……。」

副長の部屋で、‘女を連れ込むな’の理由で怒られている僕は、一部始終話す。
女なら芹沢さんも、さすがに手は挙げない。そうどこかで確信していたが、その確信も呆気なく崩れ去られる事だった。

「大変です!」と緊急事態の報告が入り、梅と芹沢が居る部屋の襖をバンッと開く。すると目の前に映った光景は余りにも濃いものであり、むせかえる程甘いものだ。
しかし突っ立っている訳にもいかず、芹沢から着物を着崩した梅を無理矢理離す 。ボロボロと大粒の涙を流し着物にしがみついて来た梅を自分の背後に隠す。

「まったく予想外の状況だね」

僕の言葉を聞いて何が嬉しいのか、芹沢は笑った。

その笑い声を聞いて、少し後退りをした事を今でも後悔する。











*
*









「女も斬るんですか?」

「お前の刀は女だと斬れねぇのか」

「僕の刀は土方さんとおんなじですよ」



酒を大量に飲ませた芹沢が無防備に寝ている姿。
部屋は酒の匂いが充満し、嗅いでいるだけでも酔いが移りそうな濃厚さ。その匂いの元である芹沢の体に絡みつき、同じく寝ている女は梅。

「いつの間に、こんな深い関係になったんだろうねー…」

「喋るな」

月の光で光銀色の刀を土方は迷わず芹沢の首へ振り下ろす。
が、それは致命的には至らないもの。
血を吹き出し、痛みで酔いが覚めた芹沢をみた梅は高い悲鳴をあげる。




あれから数時間後。芹沢の首を切り落とし、畳は血に赤黒くそまる。

目の前に残るのは一人残された一つの大輪華。芹沢の華。
‘私を殺して’
そう憎しみの目で見つめてきた女を、せめて苦しめずにと。僕は的確に刀を振り下ろした。


「儚いものだ」

後ろに立っていた土方はそう言葉を小さく漏らして、事態の収集に取りかかり始める。


‘儚い’


そう、この華の幹を切ったのはこの僕

儚いと言う言葉がやたらに重くのしかかってきたこの気持ちはきっと…。





「これが命の重さか………嫌だね本当。」

















命とは女とは





それはまるで『華』のよう
















拍手ありがとう。

「総司、炎の如く」の一部を薄桜鬼風に(^ω^)

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