普通くんの○○クラス

□:スーパーヒーロー
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「和輝もう帰ったかな」

放課後の教室には誰も居なく、自分のカバンだけが机の上に寂しくひとり残っていた。
和輝と谷村さんと3人で帰ろうと思っていたのにあの2人は…

『ごめん!今日ラノベの発売日なの!また今度一緒に帰るからっ』

『は……っ!俺を呼んでるお嬢さんの気配…っ』


ホント好き勝手な2人だ。
谷村さんの方は理由がわかるからいいけど、和輝は違う気がする。幻聴が聞こえるなんて、心の病気かもしれない。

ひとりとぼとぼと歩く帰り道。
今日は確か自分が夕ご飯を作る当番だったはずだ。ついでだから商店街にも寄ってしまおう。
いつもとは違ったルートで帰る。
夕日に照らされた道路はなんだか寂しく見えた。



「うぇえーーーん…」
「泣くな泣くな。お兄ちゃんが居るから」

公園にさしかかった頃。
子供の泣く声と、それをなだめるが聞こえた。
なだめている声は聞き覚えがある声だった。
(――和輝?)

気になって公園内を覗いてみると、幼稚園生くらいの男の子とそれをなだめる和輝が居た。

「ぐず…っママが居ないの…」
「そっか〜。それは寂しいなぁ……ママ帰ってくるまでお兄ちゃんが居てやるから」
「ほん、と……?」
「ホントだってば!だからもう泣かない!」

男の子の頭に手を置いて微笑む和輝。
普段のあのバカっぷりからは想像出来ないような姿だった。ちょっと見直す。

「あ!お兄ちゃん!」
「おー、久しぶり」
「ヒザいたいいたいしたの。お兄ちゃんまたクマさんのバンソウコウ貼って!」
「いいぞ〜。でも今日はクマさん無いんだ。ネコさんでもいいかな?」
「うん!」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
「なんだなんだ?」
「鬼ごっこしよーぜ」
「あっずるい!僕もするーっ」
「こらお前ら。喧嘩すな」


なんというか……微笑ましい。

……商店街、行くかな。







-*-*-*-



次の日。


「俺ってやっぱりスーパーヒーローだよなぁ〜…」

自分で自分に酔っている和輝。
今日は他クラスの子から差し入れを貰ったらしい。中身はサンドイッチだった。
その女の子からのサンドイッチを平然と食べている谷村さん。
どうしよう。違和感が無い。
その行動は絶対間違ってるのに。

「美味しいサンドイッチをありがとうって伝えてね」
「りょーかいした」

わざとらしい笑顔でウィンクする和輝は昨日公園で見かけた和輝とは別人にさえ見える。

「いやぁ、人気者なヒーローは辛いぜ」
「とくに小さい子にね」
「そうそう小さい………え?」
「ネコさんのバンソウコウは僕も欲しいかも」

にやっと笑ってやったら和輝はそれはもう猛スピードで教室から走り去って行った。
そんなに恥ずかしいか。

「なになに?なんの話?」
「ちょっと、いろいろあったんだ」

ふーん、と言いながらももう興味を失ったのか、谷村さんはひたすらサンドイッチを食べ続けていた。
添えてあった手紙まで手を付けている。……ってそれはさすがにヤバいんじゃ?!;

「圭、みてみて!」
「手紙はさすがに見ちゃ悪いよ…;」

でも気になるのも事実で。
覗き見た手紙には昨日聞いたばかりの言葉が書いてあった。




『あなたは私のヒーローです』




「さすがに笑っちゃうなぁ。あの葉山がヒーローなんて」
「あはは、そうだね」




――お兄ちゃん!

――なになに?

――お兄ちゃんは僕たちのヒーローだよ!

――そっか…、ありがとな



スーパーヒーローも嘘じゃないかも。





“スーパーヒーロー[[end]]”

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