メイン(短編)
□あたしのモノ
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『ちょっと、それあたしの論文でしょ!返しなさいよ』
あの時、あたしの論文を盗んだ研究者は言った
『ど、どこに名前が、か……書いてあるんだよ!
この論文には俺の名前しか書いて無いぜ、言い掛かりをつけてんじゃねぇよっ!!』
ムカついたあたしは、警備員に連れ出されるまで暴れてやった
結局、あの時盗まれた論文は返してもらえなかった
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頭がぼーっとする……
夜遅くまで研究してたから、寝不足で………
ベッドに頭から倒れこんで寝た
………けど、ちょっと寝た後にトイレに行きたくて目が覚めた
何か昔の夢を見てた気がする……
あれから、あたしのモノには名前を書くようにした
……まだ半分寝てるあたしはトイレの帰りに、一つ名前を書き忘れたモノがあるのを思い出した
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キュポン、とマジックの蓋をとる
キュッキュッと一文字ずつ名前を書いていく
薄暗い部屋で、名前を書いたからちょっと歪んでいるけど
「これでよしっ」
また寝よう
部屋を出る
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朝、まだ重いまぶたをこすりながら皆が起きるのを待つ―――
って言うか、起きてきてないヤツは後、一人………
ゆっくりと、階段を降りてきたあいつの顔には
「………?」
………顔には「リタ・モルディオ」の文字が書かれてた―――
「………リ〜タ〜ッ」
少し怒った声で、名前を書かれたヤツは近づいてくる
「……あんた、なに勝手にあたしの名前使ってんのよ…」
「リタ・モルディオ」って名前を書かれていたカイルに、聞いてみると
「違うよ!!ユーリさん達に聞いたよ、昨日夜遅くに部屋に入ってきたリタが書いてったんでしょ!?」
全く覚えていないあたしと、寝てる間にイタズラされたって言ってるカイルの一日が始まった
「喧嘩の間違いだろ……」
少し離れた所で、ユーリがつぶやくのが聞こえた