メイン(短編)

□感謝の気持ち
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「………むー…」

バレンタインには、特別な人にチョコをあげるのよ

ジュディスにそう言われて、チョコを一緒に買いに行かされたものの………

誰に渡すべきか………

別に…特別な相手なんていないし

誰か、一番最初にあったヤツにでもあげればいっか………

「義理よ」とか言えば、向こうも勘違いしないだろうし






で―――

「あっ、リタ。おはよう!!」

もうお昼だってのに「おはよう」なんて言ってるカイルが、あたしの目の前にいる

「…おはようじゃないわよ………」

よし、こいつでいいか

チョコを……

渡そうとしてるつもりなのに、チョコを入れた袋をあいつから見えないように体で隠したまま 動けないあたしは一体なんだ!?

「あー……」

………?何か言おうと思ったのに、言葉が上手く出て来ない………なんでよ……

これじゃ、うなってるだけじゃないっ…

「あっ、そうそう……はい、コレ………」

で、カイルがあたしに渡してきたのは―――

「……チョコ?」

なんで、カイルがあたしにチョコ渡すのよ……!?

「今日がバレタインだって聞いてさ………」

なっ…だったらなんで、男のあんたが……

それに、バレタインじゃなくてバレ“ン”タインだし……

「日頃、特別お世話になってる人に感謝してチョコを渡す日なんだよね。エステルさんに聞いたんだ……」

……エステルが?

えっ?
あぁ、そっか『特別な人』ってそういう意味だったの……!?
なんだ………そっか…

だったら………

「じゃ…はい…これ、あげるわ」

“感謝”する日なら、感謝してあげる

「………!!あ、ありがと…リタ…
あ…でも、オレのは……」

カイルにチョコを渡した時の、あいつの顔が真っ赤だったから………

なんだか、こっちまで赤くなりそうだから……

「じゃっ……」

まだ何か言いたそうな、カイルから離れた



「あ〜〜……あつい…」

ただの感謝のハズなのに、顔がほてる……



とりあえず、一口、カイルがくれたチョコを口に入れる

顔が熱いと口の中まで熱くなってるのか、チョコはすぐに溶けた

「………甘い…」

あたしのあげたチョコは、どんな味してたのかな………
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