メイン(短編)

□邪魔
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「んー?」

今日は、心地いい風がふいていて、どこかの木陰で本でも読もうかなんて考えて、少し小高い丘の上に、一本だけ生えていた木の近くへ行って、ひょいと近くの木陰を覗いたら―――

「…すかーっ………」

金髪の先客がいた―――

「また寝てる……」

こいつは、移動してる時と戦闘の時しか起きてないような気がする………

しかも、一度寝たら中々起きない………

最初は、疲れてるのかと思ったけど
どうも、そういう体質みたい―――

すっごくタチが悪いと思う

まず、朝はカイルを起こすのに時間を費やすし―――

「んー、邪魔………」

今、ここであたしが腰を降ろそうと思った事の妨げにもなっている―――

ちょうど、木陰を占領するみたいに横になって寝ているカイル―――

どうにか動かせないかと―――

「よいしょ……っと」

とりあえず、転がしてみる―――

仰向けになって寝ているカイルの身体を半分だけ転がしてみた―――

「うーん……すかーっ……ぐーっ……」

一瞬、起きたかと期待したけどすぐにまた、さっきと同じ様に寝息をたてはじめた

「よしっ、OK!」

とりあえず、ぎりぎり座れるスペースは出来た!

俯せでも仰向けでもなく、横向きになって寝ているカイルの背中にくっつくけど、とりあえず座れるし、まぁいっか―――

本を開き、文字を追っていく―――



本を読みはじめてから結構な時間がたったかな……

「うーん…」

隣にいたカイルが、寝付きが悪そうに呻く

視線を本からカイルに移すと、太陽の光りが、カイルの顔にバッチリ当たっていた

「ふふん、いい場所を独り占めしてた罰よ」

また本に目を戻す

えーっと、最新の魔導器の活用理論は………

なんて、考えて……油断していた―――


いきなり、本に何かがぶつかって―――

「えっ……?」

弾かれて飛んで行った本を目で追っていたら―――

いきなり、あたしの足の上に何かが乗って―――

「むにゃ……?」

あたしの膝に顔があって―――

「は…っ?」
「え…っ?」



えーっと…あたしの膝の上にカイルの頭が乗っていて、さっきまで寝ていたカイルと目が合って―――



「うわぁっ!?」
「きゃぁっ!?」



ゴンッ



カイルがいきなり顔を上げたから、カイルのおでことあたしのおでこがぶつかって―――

「いったぁ……っ」
「いっつつつ…っ」
立ち上がったカイルにあたしもつられて立ち上がってしまった―――

横向きになって寝ていたカイルが、寝心地が悪いからまた仰向けに寝転がったから……

あたしの膝の上に転がって来たのか―――



「あっ、あの、えっと!?」

真っ赤になったカイルが、しどろもどろに何か言おうと口をぱくぱくさせている―――

「ご、ゴメン!?」

そう言って真っ赤な顔をしたまま、走って行った

なんで疑問形?

目の前が坂になってるのに、走って行くからすっごい速さで目の前から消えて行った―――



「………なによ…」

一人になった木陰は、広くて座りやすいけど―――

ちょっと、風が寒いし―――

「待ちなさいよ…っ」

顔を見ていきなり逃げたあいつにも腹がたつし…飛んで行った本を拾ってから―――

「ねぇ…待ってってば!!」

カイルを追ってみることにした―――
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