こんな雨の日は何もしたくなくなる。雷も鳴っているのなら尚更。


 今日はあの子とのデートの日。行き先は最近新しくできたテーマパーク。こんな雨じゃ、楽しめるはずがない。


 雨音に耳を傾けながら文字を打つ。携帯の液晶に映るのは僕の紡ぐ謝罪の言葉。

 『 ごめん。 』

 そう打つと、いつかどこかで見た言葉が候補の欄に出てくる。


 また、今度に、しよう。
 一文節ずつ出てくるものたちを選択してゆく。空が僅かに光って、しばらくしてから遠くで不快な音が聞こえた。


 『 また今度にしよう 』


 ディスプレイを眺めてみる。予測変換で出てきたものたち。メール作成を中断して、自分の送信メールを見る。


 何件も、何件も。彼女に宛てたメールはその文章しかなかった。


 『 ごめん。 』


 また今度にしよう、打ちかけてやめた。雨はやんで、雲間から太陽が覗き出した。


 『 今から僕の家に来て 』


( せっかく誰もいないんだから )






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