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□それはあの暑い日の出来事でした
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「暑い……」


 じわりと滲む汗、うるさい蝉。そんな中でぽろりと零れた言葉。


 汗さえ伝っていない目の前にいる金髪の人間を睨みつけた。

 彼はそう、とだけ言うと一度上げていた顔を再び分厚い本へ戻した。その刹那、


「じゃあ脱げば?」


 耳を疑う言葉が返ってきた。


 何を言っているんだこいつは。家に来てなんて言うから来てやったら本ばかり読んで。その上なんだその発言。エアコンをつけてほしいからそう零してみたのに。そして私は別に羽織るものなど着ていない。ということはこれを脱げば下着だけになるということで。そんなこと、アンコやレイコの前でだって出来やしない。


「どうせ下に何か着てるんだろう?」


 ぺらりと本のページをめくりながら彼は言った。肌着のことを言いたいのだろう。


「暑かったから、着てない……」


 そう小さく呟くと、本日二度目の書物から顔を上げる動作。

 私を凝視する彼。悪かったわね、そう呟いて手持ち無沙汰なのでその彼によって出されたお茶菓子に手を伸ばしたその時、


「見たいな」


 微かに口元に笑みを湛えて、次の瞬間私が見たのは天井と、意地悪に笑ってみせた彼だった。



END.


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