純血たる雪鬼姫
□少女、流転する
1ページ/4ページ
―――薄気味悪い子だよ、何をされても泣きやしない。
「(泣いたら、あんた達はエスカレートするだろ)」
―――この平和な世で…あんな強い力を持って何になるの。
「(持ちたくて持った力じゃない、のに)」
―――今まで何人の同族を殺してきたか…同族殺しの御子だよ。
「(あんたらがボクを殺そうとしたから、殺られる前に殺っただけ)」
―――今にあの子は一族を滅ぼすよ、長の御子のくせに。
―――力は少し劣るが、弟君の方がよほど次代にふさわしい。
―――恐ろしい子、呪われた子。破滅の子どもだよ。
―――あんな子、生きていたって一族の為になりゃしないよ。
―――さっさと死んでしまえばいいものを…。
「(…うるさい、うるさいうるさい…!死ねばいいのは、あんたらの方だ…!ボクは…ボクは…!!)」
物心つく前から、こそこそと囁かれる陰口。
“その”瞬間も、吹き飛ばされた自分の耳に入ってきたのは、呪いを吐きかける冷たい声だった。
「…これで、一族の未来は保たれた。二度と生まれてくるな、厄災の子よ。
お前を産んだせいで、妻は命を絶った…この、疫病神が…!!」
「…ちち、う…え…」
自分の意識はそこまでだった。
ただわかったのは、道場帰りの自分を、父が車ではねたという事だけ。
走り去っていく父の車を霞む視界で追いながら、意識は闇に落ちていった。
○○○