Novel

□obediently
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「リタはユーリに告白とかしないのです?」

「…っはぁ!?」





obediently





あの旅から1年ぐらいは経った春。

1年もあれば自分の周りも少し変わったようで、
カロルはナンと、
フレンはジュディスと、
そしてエステルはなんとあのおっさんと付き合っている。
(あたしは猛反対したけどエステルが言って聞かないから、泣かしたらおっさんを丸焼きにするという条件で許した)



そしてあたしは…まだ独り身だ。

でも好きな人がいないわけではない。

その…あたしはユーリが…す、好きだと自覚したのは旅の途中。

そのことについて最初は隠していたが、エステルに攻められてつい口が滑って言ってしまった。
(さらにそれがおっさんとジュディスに聞かれて何かある度にからかわれたりした)

しかし、あたしの性格が災いしてなかなか素直になれずにいて、旅が終わってしまった。


旅が終わった後も時々会うが、それでも関係は全く変わらない。


そして今、春になったハルルの木の元で花見をしている。


そこであたしとエステルは少し離れたところで話し合っていた。



そして冒頭のエステルの言葉だ。

いきなりのエステルの言葉にあたしは声を裏上げて叫んでしまった。

他の仲間が何事かとこっちを向くが、目で気にしないでと訴えたらわかってくれたらしく、またみんなで騒ぎ始めた。


「全く…なによ急に…」

「いえ、いつも二人を見ていますけど、進展が見られないので…」

「い、いいでしょ別に…」

「よくないです!私はリタには幸せになってほしいんです!」

「エ、エステル…でも…そんな…こ、告白なんて…」

「恥ずかしくてできない、かしら?」

「んな!?ジュ、ジュディス…!?い、いつから…!?」

「あなたが叫んだ時よ」

「き、急に話しかけないでよね…」

「ふふ…ごめんなさい…ところで、あなたは本当に彼に告白しないのかしら?」

「う…だ、だから…」


そう、告白なんて恥ずかしい。
エステルみたいに、素直ならまだしも、あたしはこんな性格だから…。

そんなことを思っていたら、


「恥ずかしがっていてはダメです!そんなことでは誰かにユーリをとられてしまいますよ!」


と、エステルが怒り、さらに、


「彼、モテるからね…」


と、ジュディスが追い打ち。


「う…そ、そんなこと言われても…」

「たまには素直になってみたらどうです?」

「素直に…」

「そうよ、リタ。女は度胸よ」

「度胸…」


素直…か…。
そうね…たまには少しぐらい素直になっても…。

うん、度胸ね!


「決めた!この花見が終わったら…告白する…!」

「ふふっ…その意気よ」

「ガンバってください!」







そして時は夕方



花見はひとまず終わり、あたしはユーリと残って後片付け。
(まぁエステルが無理矢理あたし達に頼んできたんだけど)


告白するなら…今…!


あたしは大きく深呼吸をして落ち着かせ、


「ね、ねぇユーリ」


ユーリに声をかけた。


「ん?どうした?」


ユーリが振り向き、あたしのほうを見る。

その黒い瞳に顔が熱くなった気がしたけど、それでも我慢して、続ける。


「大事な…話があるんだけど…」

「どうしたんだ?改まって」

「その…今はもうみんな…誰かと付き合ってるよね…」

「…あぁ…そうだな…」

「で、でもさ…あんたはまだ誰とも付き合ってないけど…」

「………」

「その…誰かと付き合おうとかは思わないの…?」

「…相手がいないんじゃ、どうしようもねぇだろ」

「じゃ、じゃあさ…その…」

「ん?」


そこであたしは黙ってしまった。
やっぱり、恥ずかしい。
もし、フラれたら、この関係は壊れてしまうのだろうか。
もし告白しなかったら、今の関係のままでいれるのだろうか…

いや、ダメだ。
あたしは素直になると誓った。
素直に告白すると誓った。
ここまできて逃げてどうするんだ、リタ!
女は度胸!


あたしはさらに顔を赤くした。
おそらく、今のあたしは、夕日より赤いだろう。
恥ずかしい、恥ずかしい。
でも、する。告白、する。


「どうした?」

「…っだ、だからっ!あたしが!あんたの!かっ…彼女になる…って!」

「…は?」


「だ、だから…!」

甘党で、猫好きで、

「その…!」

皮肉屋な自信家で、

「あ、あたしは…!」

悪いことが許せなく、

「た、旅を…してた時から…!」

優しくて…

「ずっと…」

どこか温かい…

「あ、あんた…ユーリの…ことが…」

そんなあんたが…






「好き…なの…!」






言えた。

あたしの、一世一代の勇気。
こんなに恥ずかしいなんて、思わなかった。
今にも倒れてしまいそうだ。


「………」

「………」


沈黙が続く。
聞こえるのは風の音と、風に揺れるハルルの木だけ。

あたしはその空気に耐え切れなくなり、


「な…なんか言いなさい…よ…」

「…っは、ははは…」

急に口を開いたかと思えば笑い始めた。
その態度にあたしは機嫌を悪くして、

「…っな、なによ…」

「はは…いや、わりぃわりぃ…お前らしくねぇなって思ってな」

「っな…!あ、あたしは…真面目なんだか「でも、嬉しかったぜ」

「…は?」

「本当は俺から言うつもりだったんだがな…先越されちまったか」

「…へ!?」


…えっ!?
今…言うつもりって…
え…それって…


そんなことを考えてたら急に腕を取られて、
気付いたらユーリの胸が目の前に…
つまり、抱きしめられてる状態。…って!


「ちょ、ちょっと離しなさい…よ…!」

「なんだ?嫌か?」

「いっ…!!」


嫌と言おうとしたけど、嫌じゃない。
逆になんだか…心地よい。


「嫌じゃ…ない…」

「なら、このままでいいだろ」

「…ねぇ」

「なんだ?」

「あんたの…返事は…?」

「そんなのここまですればわかるだろ」

「っそれでも…ちゃんと聞きたいの…」

「…しょうがねぇなあ…」


困ったようにため息を吐きながらそういうと、
いきなり顔を近付けられ、

ちゅっ

そんな音がした…
キスされたと理解するのに少し時間がかかった。



「俺も…リタが好きだ」

「…うん」





新しくカップルとなったユーリとあたしを祝うかのように、温かい風と桜吹雪があたし達を包んだ。









(今日はやけに素直なんだな)
(…たまにはいいでしょ)
(いつもだったらもっと嬉しいんだけどな)
(バッ…バカ…)








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…久しぶりの更新がこれでいいんですかね…?

というのはおいといて企画「ツンデレ黒猫の恋詩」の投稿作品です〜
素直になるリタを目指してみました〜
(えっ?いつもと変わらない?キニスンナ(殴

にしても自分、文下手なのになにやってるんだ…
しかも周りの人がうますぎて私がなんだか浮いてて
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

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