捧げ物

□これからも、ずっと、
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あたし達はもうすぐ最終決戦の場、空中に浮かぶ塔―古代都市タルカロンへ行こうと思ってる。
そして、その準備のためにオルニオンで滞在中だ。

そして今、自由行動だから各自で行動しいてる。


その時あたしはずっと悩んでた。
もうすぐ旅が終わる。
そして、ユーリはどこに行くのだろうか。



あたしはユーリに恋してる。



そう気付いたのはいつだったかわからない。
でも、この気持ちは確かだ。

だから、ずっとユーリの側にいたい。

今はまだ、旅の途中だからまだいれるものの、
旅が終わったらいれなくなる、
下手したら会えなくなるかもしれない。


あたしとしては、それは絶対に嫌だ。


だから、ずっと考えてた。

そしてその結論は、ユーリと一緒に暮らせばいい。

でもあたしにそんな告白まがいなこと言えるわけない。

「…はぁ…」

「どうしました?リタ」

「ふぇ!?」

「リ、リタ!?」

「あぁ…エステルか…」


ずっと考え事してたせいか気付かなかった。


「どうしたんです?」

「ちょっと考え事」

「私でよければ相談にのりますよ」


そういえばエステルはこういう時頼りになるかもしれない…
一応、そういう本を沢山読んでるし


「じゃ、じゃあ聞くけどさ…あ、あんたはさ…その…好きなやつともうすぐわかれるってわかった時ってさ…どうする…?」

「そうですね…」


エステルは少し考えてから答えをだした。

「やっぱりずっと一緒にいてって言うかもしれませんね」

やっぱり。あたしと同じ答えがでてきた。でも…

「はぁ…やっぱそうよね…」

「リタ?」

「あ、な、なんでもない!///」

「そうですか…?」

エステルは少し間を置いてから、

「そういえば、ユーリはこの旅が終わったら暫くは元の下町の宿屋に戻るみたいですよ」

と言ってくる。
何故今言うのか…もしかして…!

「だから、その時に言えばいいんじゃないです?」

「へ!?ななななんであたしがあんなやつと…!!」

「だってさっきのってユーリのことじゃないです?」

「そ…れは…!」


そういえばそうだった。

エステルはこのことには鋭いんだった…


「しかもリタにはもう家が無いという言い訳もありますよ」


…おそらく悪気はないんだろう…
地味に傷つくけど…

でも…確かにそうだ。
あたしには家が無いという言い訳ができる。


「そ、そうね…ありがと、エステル。今度言ってみるわ」

「どういたしまして、頑張ってください!」

「え、えぇ…」


そうね…それじゃ次に二人きりになった時で「それじゃあ早速ユーリのところへ行きましょう!」…へ?


そう言ってエステルはあたしの手をとって引っ張っていく…って!


「ちょ、ちょっと待…」


エステルの目が輝きすぎてて全く話を聞いていない…


「あ、あたしまだ心の準備が…」

「ほら、つきましたよ!」

「へっ!?」


もう目の前にはユーリの部屋。


コンコン

「ユーリ、います?」

「どうした?エステル」

「え…あ…」


部屋の中からユーリの声がしてあたしは顔を赤くする。


「リタが用あるみたいですよ」

「エ、エステル!?」

「リタが?」

ガチャ

「どうした?リタ」

「…!!」


ユーリの姿を見るとあたしはさらに顔を赤くし、つい目を反らしてしまう。
すると、エステルが小声で「では、頑張ってください」と行ってどこかへ行ってしった。


「エ、エステル!待…!」

「で、なんだ?リタ」

「へっ!?あ、ああああのあのあのそそそその…」

「少し落ち着け…まぁ立ち話もなんだし、部屋入れよ」


そう言ってユーリはあたしの手を掴んで部屋に入れ、ベットのわきに座らせる。
ユーリはそのリタに向き合うように椅子を持ってきて座る。


「んで、なんだ?」

「へっ!?あ、あの…」

「…ちょっと出掛けてくるから待ってろ」

「あ…」


そしてユーリは外に出ていく。
おそらく、あたしに時間をくれるユーリなりの、優しさだろう。


(お、落ち着けあたし!もうこうなったらパッと言ってパッとフラれて…)


暫く考えてるうちにだんだん落ち着いてきた。

ちょうどその頃にユーリが戻ってきた。
その手には何か袋をブラ下げている。


「なに、その袋…」

「ケーキだよ」

「ふ〜ん…」

「ほれ、お前の分」

「え…」

「お前もケーキ好きだろ」

「あ、ありがと…」


あたしはユーリからケーキとフォークを受け取り、一口頬張る。
甘い味が口の中で広がる。


「…おいしい」

「だろ。俺のオススメ」

「ふ〜ん…」

「…で、そろそろ聞いてもいいか?」

「え、あ〜その…さ…あんたって…これが終わったら…下町に戻るのよね…」

「エステルから聞いたのか?」

「ええ…」

「まぁ俺はそのつもりだけど、それがどうかしたか?」

「だ、だったらさ…その…あたしって今家無いじゃん…?だから…その…」

「…俺んとこ来たいってことか?」

「な…!!」


いきなり本心を突かれたユーリにあたしはケーキを落としそうになる。


「違うか?」

「そ、そうよ…で、でもあたしなんかが行っても迷惑…よね…」

「…」


多分、迷惑だろう。
あたしはユーリと違って、何もできない。
あたしなんかが行ったって…
そう思ってたら、なんだか悲しくなってきて、あたしは部屋から出ようとする。


「もう…いい…!」

「待てよ」


すると、ユーリはあたしの手を掴む。
手に持ってたケーキを落としてしまったけど、あたしは今すぐユーリの元を離れたくて、もうあたしには関係無かった。


「は…なしてよ…!」

「なんで逃げんだよ」

「何もできないあたしなんかが行っても迷惑でしょ…!」

「…確かに、今まではまだあまりできなかったな」

「だから…」

「でも、それで今まで迷惑だと言ったことがあるか?」

「え…」

「何も今できなくたってこれから頑張ってできるようになればいい。それでもできなかったら俺がやる。そんぐらいで迷惑だとは思わねぇよ」

「…」

「それに…その、なんだ、リタがいなければ調子が狂うっつーか…」


そう言うユーリは目を少しそらして、顔は微かに赤くなっていて、本当の気持ちなんだと直感でわかった。


「じゃ、じゃあ…」

「俺んとこ、来いよ」

「…!!」


あたしは嬉しくて、込み上げてくる涙を抑えることができなかった。

ユーリはそんなあたしを黙って抱きしめた。







「これからも…ずっと…一緒にいなさいよ…」

「…あぁ…ずっと、な…」

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