Novel

□こんなに好きになってしまうなんて、
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初めてあいつに会った頃は、変わったやつ、と思ってて、

一緒に旅しても、普通の仲間みたいにしか思ってなかった。


けれど、いつからだろう。

こんなにあいつのことを意識しだしたのは。


あいつがいないと、寂しく感じ、
あいつといると、嬉しくなる。

それは、昔のあたしには絶対に芽生えない感情。

「―――タ」

この感情の名前をあたしは知ってる



―――恋



そう、あたしはユーリに恋してる

「―い、―タ」

でも、ユーリからすればあたしなんて単なる仲間で、それ以上はないのかもしれない。
そう思うと、少し胸が苦しくなる。

昔だったら、くだらないと考えて、そういう感情は一切考えなかった

けれど、今じゃ――


「おい、リタ!」

「ふぇ!?」


急に大きな声がしたから思考を止めて前を見てみれば、目の前にはさっきまで考えてた人―――ユーリの顔が…って近い!

あたしは恥ずかしくてつい一歩引いて胸に手を当てる。
心臓がうるさいほどバクバクいってた。


「な、ななななによ!」

「いや、何言ってもずっと反応無しでどうしたのかと思ってな」

「あ、あたしは考え事をしてたの!そんぐらいいつもの事でしょ!」

「いつもだったら小難しいことをブツブツ言ってたけど最近は何も言わずに下向いてたし、なんか調子わりぃんじゃねぇかと思ってな」

「そ、それは…なんでもないわよ!」

「お前な、これでも心配してんだぞ」

「う、うるさいわね…あたしなんかに別に心配なんてしなくても…!」

「俺はお前だから心配なの」

「え…」


ユーリに心配されてるとわかるとつい顔を上げてしまう。
でも、


「仲間の心配しないやつがどこにいるんだよ」


ユーリのこの一言で、また俯いてしまう。
やっぱり、ユーリからすればあたしは単なる仲間なのかもしれない…と思ってしまう。

こんな一言一言で一々反応してしまう自分はバカっぽいと思う。
でも、これが今のあたしの気持ちなのだから仕方ない。


「なによ…」

「ん?」

「別にあたしのことなんて単なる仲間にしか思ってないんでしょ!」

「お、おい」

「そんなやつの心配なんかしたってどうすんのよ!」

「おい待て!」



あぁ、言ってしまった。
あたしは逃げるようにユーリから離れていった。

ここの周りは、魔物がいることも忘れて…









「はぁ…あたし、何やってるんだろ…」


あたしはずっと走って、気付いたら結構遠くまで行ってしまったのか、周りに人影はなかった。

とりあえず、すぐ側の木に座って、頭を冷やすことにした。


「…バカ……ユーリの…バカ…」

こっちの気持ちも知らないくせに、ほんと、

「バカ…」


なんでだろう。
どうしてだろう。

なんで、こんなに苦しいの?

昔だったら、こんな思いになんて全くならなかった。

なのに、なんで…



「…!!」


急に、なにかの気配を感じ、身構えるとでてきたのは魔物。
大体6〜7匹だろうか。

その時、あたしは今の状況に危機感を感じた。

一人でこの数はユーリならなんとも思わないだろうけど、
あたしは接近戦が苦手だ。
多くの魔物を倒すには強力な魔法が必要だが、おそらく発動させる前に邪魔される。


「やば…」


あたしはつい一歩下がってしまった。

それと同時に魔物達が襲い掛かってくる。

「ユ、ユーリィ!!!」

あたしは恐怖で好きなあいつの名前を叫んでしまった。


すると、黒い髪がなびいて敵を華麗に切り倒すものが見えた。


魔物を全員倒すと、あたしのほうを向いて優しく微笑む。


「ユ、ユー…リ…?」

「どうした、こんなところで」

「あ、あんた…なんでここに…」

「リタを追い掛けに行ってみたら魔物に襲われそうになってるリタを見かけてな。いや〜まさかリタが必死に俺の名前を叫ぶとはな〜」

「…!!!///」


こ、こいつ…


「あ、あんたね…!」

「でも、リタも可愛いとこあんな」

「な…!」


ユーリはそう言って微笑む。
あたしは今、多分他からみたら赤い顔してるだろう。


「んで、一つ聞いていいか?」

「な、なに…」

「逃げる前に言った言葉の真意を聞きたくてな」

「…!そ、それは…」

「俺、さっきは仲間とか言ったけど、リタだからこそ心配してたんだよ」

「え…?」

「大切なやつには心配するもんだろ」

「…は!?」


今、自分の耳を疑った。
大切なやつ…って…


「そ、それって…」

「わかんねぇか?俺はリタが好きなんだよ」

「…!!」


え…ユーリが…あたしを…す、好きって…


「あ、あたしも…ユーリのことが…その…好き…」

「…あぁ」

「そ…れで…あんときは…仲間だからと思ったら…悲しくなってきて…」

「…悪かったな」


そういってユーリはあたしを優しく撫でる。

あたしはポタポタと涙を流して、ユーリに抱き着いた。

もう、昔の自分とは全然違うと思う。

でも、昔よりは幸せなことは確かだ。


「好き…好き…ユーリ…」

「あぁ…俺もリタが好きだ」














こんなに好きになってしまうなんて、
(昔の自分じゃ考えられなかった。)
(でも、一人だった昔よりも、幸せと思えるあたしになった。)





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初の企画への投稿作品です
いい作品になった…かな?

一応過去の自分と比べてって感じのリタを書いてみました〜


また機会があったら書いてみたいです

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