BOOKA

□ナイフを胸に突き刺して
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『ねぇー正チャンまだぁー?』

「何言っているんですか白蘭さんそう簡単に見つかるはずがないでしょうっていうかマシュマロ食べ過ぎですよ何袋目ですか。」

『え、5袋目?』

「バカですか。」



通信で会話をしているのはミルフィオーレファミリーの二人、白蘭と入江正一。通信手段がパソコンでしかないため、二人はパソコンに付きっきりである。白蘭は何事もなかったようにケラケラと笑い、入江正一は画面越しに見える白蘭に多少苛々していた(あぁ何故この人はこんなにも呑気なんだ…)
白蘭が探しているのはある、突然タイムトラベルしてきた少年で白蘭は密かに気にしていた。気になる理由、彼、沢田綱吉だからだ。この時代の沢田綱吉は既にいない。死という形でこの世を去った。勿論手にかけたのは他の誰でもない、白蘭だった。何故殺した、と言われたら答えはわからない。憎しみなのか、嫉妬なのか、愛情なのか、様々な感情が白蘭の中を支配していたあの時、誰にも悟られることなく白蘭は自分の中に眠る野獣を素直に受け入れ、何の戸惑いもなく、彼を殺した。


『正チャン僕はねー、甘いものが大好きなんだ。』

「…は?」

『特にね、甘くて、柔らかいものが好き。だからこのマシマロはお気に入りなんだ。』

「マシュマロですよ、白蘭さん。…それで、それがどうかしました?」

『うん、だからー、正ちゃんには、マシマロによく似た彼を早く捕まえて来て欲しいんだー。』

「、白蘭さん、もしかして、沢田綱吉のこと、」

『彼、マシマロに似てるでしょ?肌が白くて、触れると柔らかそうだし、匂いも、甘そうだよね…。』

「…」


(白蘭さんは彼で遊んでいるんだ)子どものように無邪気なその言動は白蘭そのものだが、逆にとれば狂気でしかない。入江は昔から知っていた。白蘭が何故こんなにも沢田綱吉のことを気にかけているのかを。それは、ただの遊び道具、としてだった。恐ろしすぎるその感情は、消えることなく、ただ白蘭の中で増幅し続けていた。


「とにかく、全力を尽くしますので、我慢して下さい。じゃあもう時間なので切りますよ。」

『うん、わかったよ。じゃーねー…』

ブツッ


機械音とともに消える画面。まるで闇が続いているかのように真っ暗だ。白蘭は座っている椅子の背もたれに全体重をかけデスクにある資料にチラリと視線を向ける。何枚にも重なっており、真新しい紙に黒い文字で記された文章が白蘭の視界に入り込んだ。ふいに、彼の顔が思い浮かぶ。恐怖の欠片もない純粋な瞳でこちらを見つめ、ただ仲間を大事にしていた優しく、威厳のある表情。思い出しただけでも背筋がぞくり、とする。自分にはない表情だから、余計に。白蘭は後ろにいる書記係に声をかけた。




「綺麗なものほど壊したくなる、ってよく言うでしょ?レオ君。」

「は、…はぁ…。」

「んー?案外そっけないね。大事な沢田綱吉が危機に晒されているっていうのに。」

「っ、白蘭様?何を言っているのですか…?」

「だから、君は彼のことが心配なんでしょってこと。六道骸君。」

「―っ!」














それから、レオから姿を変えた六道骸は白蘭に闘いを挑んだ。しかし、力は圧倒的に差が大きすぎた。いや、予想外だったと、言うべきか。このミルフィオーレの総大将はこんなにも脅威的な能力を持っていたなんて不覚だったのだ。ひざまづき、右目を手で覆う骸の前に立ち、白蘭は底知れない笑みで、言い放った。その言葉は絶望に満ち溢れ、骸さえも、恐怖に怯えた。











「周りの余分なものは摘み取って、メインは僕のもの。僕の大好きなものはマシマロと    、」













ボンゴレファミリーなんて興味ない。世界の地位さえも、いらない。







僕が欲しいのは、彼だけ―











ナイフを胸に突き刺して、

(最期は僕が見守るからさ、こっちにおいで)

















終わり
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orz

 

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