龍使者BOOK
□第一夜
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皆が揃って連れて来られた場所は教団の屋上。風がとても強く、立っているのがやっとだった。
「コムイ兄さん!!こんなところで何をするのー?」
「うん。皆に集まって貰ったのは、あれを見て欲しいからだ。」
そう言ってコムイの指差す方向にあったのは、シートをかぶせられた大きな檻。周りには結界を張る為の装置が数十個置いてあり、何より、中からは何か、強烈な殺気を感じた。
「コムイ…あれは?」
「上げてくれ。」
そう言って待ち構えていたかのように何人かのファインダーはシートを下ろした。
そこに現れたもの。
それは彼らが見たことの無い伝説と思われていた動物だった。
「室長どの、これはもしかして…。」
「さすがブックマン。よくご存知で。そうこれは【龍】すなわち【ドラゴン】だよ。」
殺気の正体は大きな龍。
体中には太い鎖が何重にも巻かれていて、身動きがとれないようだ。何mか離れていても聞こえてくる荒い呼吸。ガチガチに縛られていても血眼にこちらを睨んでいた。口には開かないように鉄のものがはめられている。これだけ厳重にしてても、これだけ離れていても、龍は恐ろしかった。
「コムイさん…この龍は一体どうしたんですか?」
「これでも一人の人間、エクソシストなんだよ。それも可愛い女の子。僕等は【龍の使者】と呼んでいるよ。」
「えー!?」
「あっはは、コムイ冗談きついさー。」
「なら写真見てみる?」
コムイはポケットから一枚の写真を取り出し、ラビに見せる。
―ピラ…―
「!…認めたくない…認めたくないけど…ストライクさ…っ!
「でしょ?」
写真を見た瞬間目を見開き僅かに頬を赤く染めるラビに、自慢げに誇るコムイ。
「そんなに可愛かったんですか?」
「…ばち可愛い…。」
「コムイ兄さん、もしかして、この子はイノセンスでこんな姿に?」
「そうだよ。」
「それで室長殿はわしらにどのような事を?」
「はい。これからこの子を元の姿に戻すので、それの手伝いを。」
「手伝いなら簡単さー♪」
「それがねぇ…」
「?」
『オオォオオォ!!!!』
―ゴオッ!―
龍の口の隙間から真っ赤な炎が吹き出た。それを見たエクソシストは青ざめる。
「…」
「口を塞いででも、近づくとあんな風に火を吹いちゃうんだー。」
コムイが軽快に言うも誰もが恐怖を感じた。
「コムイさん…元に戻すって、どうやって戻すんですか?」
「あぁ、この注射を刺すだけでいいんだ。」
「じゃあさ、麻酔銃みたいにしたらいいんじゃないの?バーンと。」
「ばかもの。龍の皮膚はとてつもなく堅いと思われている。そう簡単に刺さらん…的確なところを探さんと無理なんじゃ。そうじゃろ?室長殿。」
「ブックマンの言うとおり。
さっき麻酔銃を試したんだけど、全然効果なくて、あの子を余計に怒らしてしまったんだよ…。」
「でも兄さん…近づくって…凄く危険よね?」
「だからエクソシストである、君たちを呼んだんじゃないか!」
はっきり言って、今は笑える状況ではない。この危険な状況で、なんて能天気な人なんだろうと思った。
「…とりあえずこういうのはどうじゃ?」
ブックマンの指示をまとめるとこうなった。
@龍が外に逃げないように周りに結界装置を作動させておく。
Aリナリーはブックマンを抱えて空を飛び、龍に気づかれないよう一気に詰め寄って、ブックマンは針を投げて龍の身体を一時的に麻痺させる。
Bアレンとラビは即、龍に近づき注射する。
「これはアレン殿とラビが一番危険じゃ。注射を刺したら即離れろ。どうなるかわからん。」
ブックマンの言葉に、二人は意を決して道具を構えた。
「では決行しよう。」
「皆よろしくね…。」
作戦が開始された。
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