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□vampair cross -9-
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全長 295m
総トン数 69.867トン
最大客員数 1825人
従業員数 1206人

 豪華客船と頭名のつく船舶の中でも、大きさと優美さは1.2を争うと言われている。
 その名も『プリンス・エドワードV』


 龍樹はそんな超豪華客船と言える船の一角で溜め息をついた。
 本来ならこんな豪華客船に乗って海の上に居るはずではなかったのだ。そして、いま溜め息をつく必要も‥
 こうなったのも3日前。





 予想外の乗船の仕方に、改めて差し出された左手を茫然と見ていたら、乗組員らしき男が一人近付いていた。

「お前達 何者だ!?」

「あぁ‥丁度良い。船長…この船の責任者を連れてこい」

「は?」

「あんたじゃ無理だってんだ。良いから呼べ」

 この船のクルーであろう青年をラスティは顎で早く呼んでこいと追い払った。それを見送ったあと、いまだぼうとしている龍樹を呆れて見下ろす。

「…俺、パスポート持ってねぇ‥」

「ぁ?心配すんな。オレが解決してやるよ」

「つーか。服とかも‥」

「だぁから、大丈夫だっつの任しとけ」

 自信満々に言い切ったラスティに、龍樹はとても信用できねぇ。そう思った。
 思いつつ龍樹も、いい加減にラスティが差し出した手を無視して立ち上がる。そのときだ。
 船の内部から、先程ラスティが半強制的に使いに出したクルーと遠目からでも判る白い髭を生やした初老の男性が歩いてきた。
 思わず龍樹は身を引き締めたのだが、ラスティは反対にやっと来たかと肩を竦めるだけだ。

「お待たせいたしました。私がこの船の支配人です。何か御用で御座いましょうか?」

「あぁ。少し込み入った話になる。どこか部屋に入らせてくれ」

「…失礼ですが、チケットはお持ちですか?彼から聞いたのですが貴女方は、正規のルートで入られたのではないようで」

 あくまで口調も表情も上品な支配人と名乗った男は、しかし笑顔とは裏腹に、威圧を放ちつつ2人を見やる。



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