書庫
□vampair cross ー8ー
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汐気を含んだ海風が髪を撫でていく。
数ある倉庫の一つにラスティは座っていた。ココからだと、人の姿がよく観察できる。日が沈んで暫らく経っていたが、夜目が効くヴァンパイアには関係ない。
「来る。‥と思うんだけどなぁ」
ぼそりとでた独り言に、思わず苦笑する。
正直、あいつを引き込むのに、かなり卑怯というか強引な手を使ったとラスティでも思う。でも、それでもラスティには“あいつ”が。相方が必要だった。
チケットを渡してあるが、最終的には、判断するのはあいつだ。ラスティはここで待つしかない。
さいわい、出航時刻まではあと暫くある。ゆっくりとあいつを待つことは可能だ。
その時、視界の端を何かが横切った気がした。
視線だけで確認するが、犬か猫かの動物だったのかそこに姿はない。少なくとも、ラスティの待っている人物ではないようだ。
人が来る気配は、まだない。
時間はたっぷりある。‥…はずだった。
先ほどまでは。
「クソッ!!なんだって解らなかったんだ」
どう悪態をついたところで、状況が変わることがないのだが、ラスティは吐き捨てた。このままではあいつ‥龍樹と合流することが出来ない。
状況は…最悪だった。
「なんだってヤツらが‥。ドラキュラがいるんだ。んな話聞いてねぇぞ!!」
先ほど、視線を横切ったものに裂かれた二の腕を真っ赤な血が滴っていた。