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□vampire cross -5-
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 平和な日々が過ぎていた。
 一ヵ月ほど前のあの悪夢の様な連続失血死事件(世間的には、そのように命名されていた)も、被害者が出なくなってからは、あっという間に忘れ去られている。
 実際、総てを知っている龍樹も、あれは悪夢だったのではないかと訝しむ程だ。
 情報に溢れているこの社会、当事者でもない限り、簡単に忘れていくモノなのだろう。



 龍樹が自嘲気味に独り笑い、カタンとシャーペンを置いた時。タイミングを計ったようにチャイムが、教室前方にあるスピーカーから流れた。
 途端に、張り詰めていた空気が破れ、あちこちで鉛筆を置く音・背伸びをする音が生まれる。その間を、監督の教師の指示に従い、答案を集める生徒がいた。
 ようやく、一学期の期末テストが終わった瞬間だった。
 コレから先、数日間行われる講習会を耐えぬけば、長い永い夏休みが始まる。

 そう、学生が解放される夏休みが....



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