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□vampire cross -4-
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夏では夕暮れというにはまだ早い時刻、龍樹とラスティの声が喫茶店に響いていた。
「何で俺がこんなモン着なくちゃなんねぇんだよっ!!つーか、どっから手に入れたんだ!?」
「何だよー。サイズぴったしなんだから別にいーだろ?」
「良くねぇっ!何で俺の服のサイズ知ってんだっ?!」
怒鳴る龍樹の手に握られているのは、自身が通う高校の女子制服。
放課後、帰宅途中にラスティによって喫茶店に拉致され、笑顔の店主にソレを渡されたのだ。もちろん、龍樹にそんな趣味はない。
「…ラスティ様、説明されてなかったのですか?」
「時間がねぇんだよ。とりあえず着ろ。そしたら説明するから」
呆れて龍樹とラスティとの言い合い見ていた店主の一言に、後頭部をガシガシと掻いてラスティが疲れたように言う。
それでも、動かない龍樹ににっこりと嗤った。
「龍樹ぃ?さっさと着ねぇと服ひんむくぞ?」
表情としては絶好の笑顔だが、目が全く笑っていない。龍樹は顔を強張らせ引きつらせると、そそくさとトイレに向かった。
さほど時間も掛からずに龍樹はミニスカートに着替え出てくる。
「これていいんだろっ!」
叫ぶと顔を真っ赤にさせて席に座った。
「上出来。良く似合ってるじゃん」
「煩ぇ。いいから、さっさと理由話やがれ」
「‥龍樹には囮になってもらう」
三白眼で睨む龍樹に、ラスティも真面目に頷いた。
「…この格好で外に出ろっていうのか」
「大丈夫。誰も男だなんて気付きゃしねぇよ」
「だからって!!」
「昨日の奴が言ってただろ?奴らの好物は女なんだ。人間のな」
「……‥」
不満を隠さない龍樹を無視し、ラスティは続ける。
「オレじゃ前回ので、存在がバレてる。こんなこと頼める奴なんて居ねぇんだよ」
頼む。そう言ってラスティが頭を下げた。
納得してない表情だったが、龍樹がすっと立ち上がる。そのまま黙って、入り口まで行ったとき振り返った。
「龍樹?」
「行かねぇのか?捕まえんだろ?協力してやるよ」
「助かる。んじゃ、さっさと行くぜ。前回のリベンジだ」
「ラスティ様、龍樹さん。くれぐれも無理は‥」
「判ってる。じゃあな」
カチャンと金具を鳴らし、ラスティが店主に手を振り、2人は喫茶店を出た。