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□vampire cross -2-
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昨日、ラスと別れてから、彼女の預言が当たったかのように降り始めた雨は、一晩経った今も降り続いていた。
昨日よりも早い時間、龍樹はラスティに出会った公園を通っていた。此処を通った方が家に近いのだ。
「よぅ。昨日よりも早かったな」
「ラス‥。」
シトシトと降り続く雨に嫌気を感じながら、歩いていたら声を掛けられた。
顔を上げると、黒い傘を差し、木の根本にラスティが立っていた。
条件反射というわけでもないだろうが、龍樹の顔は険しくなってしまう。
「なんの用だ?」
「つれねぇ返事だな」
クツクツと笑いながら、ラスティは龍樹の前に立った。
身長差の関係で、龍樹はラスティを見上げる形になる。
「オレと龍樹の仲だろ?」
「どんな仲だよι」
茶目っ気たっぷりと言ったラスティの言い様に、龍樹は酷く疲れた顔になった。
大きく溜息を吐いて、ガシガシと頭を掻く。
「で、本当になんの用だよ。俺も暇じゃねぇんだけど?」
「昨日の約束。詳しい話は今日するって言っただろ」
「あぁ。そーいやそうだったな」
思い出したと言う様に頷いた龍樹に、ラスティも満足そうに頷いた。その動きに、服に付いている鎖が、じゃらりと重そうな音を発てる。
シトシトと降る雨の中、その金属的な響きは、妙に硬く聞こえた。
雨の中で話すのは嫌だと、ラスティが龍樹を連れてきたのは一軒の喫茶店。
2人が会った公園からも程近い所にあるのだが、入り口は非常に目立たなく、何度も前を通っている筈の龍樹も知らない店だった。
店内はクラシックだろうか‥龍樹の知らない曲が音量を控え目に掛かっている。
暇じゃないと言いながら、ラスティに着いてきたのは、何だかんだ言いって気になるからだ。
そうでもなければ、全身黒で、鎖が付いた服を着た少女‥しかも自らの事を吸血鬼と名乗るような怪しい人物に付いてくる訳が無い。