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□緊張の夏、アメストリスの夏
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【緊張の夏、アメストリスの夏】





「夏なんて嫌いだ…」

 東方司令部司令官ロイ・マスタング大佐は、ギラギラと輝く太陽を力なく見上げた。

 滴る汗が漆黒の艶やかな髪の毛を額や頬に張りつかせて、それが鬱陶しいのか気だるげに白い繊手が髪を掻き上げた。
 藍色の軍服の下に着た白シャツは汗を吸って細い身体にまとわりつくようにピタリと張り付き、気持ち悪さだけを与えてくる。
 


ーーだいたいこの軍服というヤツは何だ!夏用に生地が多少薄くなるとはいえ、相も変わらず長袖で襟元まで覆って暑苦しいことこの上ない。夏は上着無し!半袖シャツ!女性軍属はミニスカ!で良いじゃないか!!その上、機能性だか伸縮性だか防御力だかが優れているという売り文句だが、通気性や吸湿性は二の次になってやしないか?あまりにも暑いから、いっそシャツが無い方が少しでも涼しいかと素肌に上着を直接羽織ってみたが、ごわごわの固い生地は肌に擦れて痛いし、軍服はシャツ以上に汗を吸わなくて汗まみれになった身体が気色悪いし。では上着を脱いでシャツ姿になって袖を捲って襟元を緩めれば少しは涼しいかと実行してみれば部下たちが、
「何て格好してんすかっ!?」
「…危険です」
「大佐、透けてますっ」
「暑さで頭が茹だっている輩がいますから…」
「ヤバいですよぅ」等々。
 意味不明な言葉を口々にしながらよってたかって無理矢理上着を着させられてしまった。第1ボタンまでキッチリととめられて。あれは何だ?嫌がらせか?そんなに私が憎いのか?!しかも「暑い」と言っているのにやたらとスキンシップを取りたがる馬鹿犬がところかまわずくっついて来ようとするし。えぇい、鬱陶しい!暑苦しい!臭い!近付くな駄犬っ!!




 
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