FA text

□いつでもいっしょ
3ページ/3ページ



「…と言いたいところだが、食べ物を粗末にするのは勿体無い…。もう作ってしまっている訳だし、だから…その、少尉がそこまで勧めるのなら、…食べてやっても、いい…」
 ハボックの顔にみるみる笑顔が広がり。それにつられてロイもまた笑顔になった。

「…朝っぱらから見せつけてくれるよなー」
「何だか、気温が高くなった気がします…」
 ブレダとファルマンがファイルでパタパタ扇ぐ。フュリーだけは何やら感極まった様子でうっとりとロイとハボックを見ていた。
「やっぱり仲がとってもよろしいんですね。羨ましいです!いいなあ少尉のお弁当、僕も食べたいなあ」
「止めとけ」
「止めなさい」
 二人の上官がすかさず止めに入った。
「馬に蹴られて死んでしまうから」
「はあ…?」
 ファルマンの分かったような分からないような説明に、フュリーは怪訝な表情で首を傾げるのみだった。



 天気も良く、中庭には適当に木立もあり、直射日光を遮ってくれる。気温もポカポカと暖かく絶好のピクニック日和だった。
 準備の良いハボックが用意した敷布を芝生の上に敷いていく。
「この辺でいいっすかね。はい、大佐座って下さい」
 いそいそと包みを解くと、大小幾つもの容器が現れた。
「大佐の好きな物も、嫌いな物も、沢山詰めてきましたからね」
「嫌いな物?! 聞いてないぞ少尉!!」
「言ってませんから」
 サラリと返す小憎たらしい笑顔を睨みつけるが、まったく効果は無いようだ。
「だって、あんたの嫌いなものって栄養価の高い物ばかりだし…大丈夫、ちゃんと細かく刻んだりペースト状にしたりして他の食材と混ぜてわからなくしてありますからね。食堂のメニューより食べやすいはずですよ」
「…本当だな?不味かったら二度とお前の手料理は食べてやらんぞ」
 まだこれからもハボックの手料理を食べる気満々なのかと、聞く者がいれば突っ込むところだが、幸いにして二人の他は誰もいない。
「はい大佐。野菜のポタージュですよ。熱いから気をつけて下さいね」
「野菜?何が入ってるんだ?」
「色々です」
「………」
 色々の内訳を尋ねてみたい気もしたが、飲む気が失せそうで止めた。
「この一番大きい容器がサンドイッチで、えーとこっちが…おかずだな。じゃあこっちがデザートか…あ、大佐!駄目っすよ!デザートは一番最後!肉も野菜も食ってから!」
「見るだけだ」
「あんた、見るだけじゃ済まんでしょうが…あ、コラ駄目だって…!」





「あー美味そうだなあ、サンドイッチ…」
「力作だなぁ。何種類入ってんだ?」
「『はい、タコさんウィンナーですよー。アーン』」
「『うん、美味い。ほらお前も、アーン』」
「……って言ってんだろうな…」
 中庭は四方を建物で囲まれた文字通り中ほどに位置する庭だ。即ち建物内に居ればもれなく嫌でも中庭の様子は目に入る。特に食堂は中庭側が全面窓ガラスとなっており、普段は食事をしながら木々の緑や陽の光、四季の移ろいを楽しめるのだが。
 今現在、彼らの目に映るのはいちゃくら楽しげに食事をするバカップルのみだ。さすがにバカップルの会話までは聞こえないが、二人の表情・動作から推測して勝手にアフレコして遊ぶものも現れた。
 陽光の下、薄暗い室内は見えにくい。そこが食堂で多数の人出があることは分かっているだろうが、気にしていないのか、失念しているのか、互いの姿のみしか彼ら二人の世界には存在していないようだった。



 久々に食堂を利用しに来たブレダ達は非常に気まずい思いを味わっていた。
『何とかしろよ、お前ぇらんトコのあのバカップル!!』
 そんな無言のプレッシャーに耐え、ブレダとファルマンは共に窓ガラスに背を向けて気まずく食事を続けるのだった。







自分の恋心は誰にも気付かれていないと思ってるロイ。気付いてないのはハボだけです。


 
 
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ