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□モンゴリアン ブルー スポット
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「あ、黒髪黒目ってことはもしかして大佐も?」
「そうですねぇ。恐らくあったと思いますよ」
 何気なく訊いたブレダに、フュリーもさらりと返す。
 が。
「いや〜…、そんな痣無いぜ?大佐の尻んトコになんて」
『あった』と過去形を使った意味を考えれば『現在はない』と言う意味にとれるのだが、そこまで深く物事を考えないハボックはつるりと口を滑らせ、和やかだった談笑の場を一部分凍らせた。
「あ、大きくなると大抵消えちゃうんです。痣があるのは子供だけですよ」
「あぁ、なんだそっか、それでかぁ」
 はははははっと笑う二人は投下された爆弾に気付いてはいない。ネタを提供したフュリーも、爆弾を投下したハボック自身さえ、己の発言の意味に気付いてはいなかった。
(気付いてない!)
(気付いていません!)
 ブレダとファルマンがチラリと視線を交差させた。
(このまま自然に流して次の会話へと…)
 ブレダがファルマンの子供時代に話を振ろうと口を開きかけたその時、一瞬早く無邪気な質問がフュリーの口から発せられた。
「そういえば、何でハボック少尉は大佐のお尻に痣が無いってご存知なんですか?」





 
 
 先程までの喧騒が嘘のように大部屋が静まり返った。答えを待つフュリーも、冷や汗をかきながら見守るブレダとファルマンも、「え?」と小さく声を上げたきりフリーズしてしまったハボックも、誰も口を開こうとしないからだ。
 やっと自分の発言の意味に気付いたらしいハボックがわたわたしながら「あー」とか「うぅん」とか呻いている。
「あぁ…っと、それは…その、何だ、まあその、ほら……なぁ?」
 意味のない単語の羅列を繰りながら、チラチラと傍らの親友に助けを求めるような視線を投げる。しかし投げ掛けられた本人は、
(バカ、こっち見んじゃねぇよ!自分で何とかしろ!)
 視線をそらし、まずい茶を啜るのだった。
 ファルマンは視線をハボックとフュリーに合わせないように注意しつつ「モンゴリアン ブルー スポットは母親の胎内で胚が発育段階で真皮内のメラノサイトが移動するさいに……」と小さな声で説明をしていたが、誰も聞いちゃいなかった。





 その時、大部屋と執務室の境にあるドアが薄く開いていることに、部下達は誰も気付いてはいない。
(何をやってるんだ、馬鹿ハボ!駄犬!万年発情期!!)
 声に出さず口汚く罵る者がいた。ロイだ。
 
 賑やかな笑い声に惹かれて自分も息抜きしに行こうと扉を開きかけたところで問題発言が耳に入ってしまったロイが、出るに出られずいつまでも戸口で立ち尽くしていたのだった。








 
ロイの出番殆ど無いけどひっそりハボロイが隠しテーマ(笑)。

フュリーは何もかもお見通しで無邪気なふりして内心『ククク…』て嘲笑ってるといいのに。腹黒フュリー……萌える。
 
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