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□緊張の夏、アメストリスの夏
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「…夏の莫迦野郎っ」

 東方司令部司令官付護衛官ジャン・ハボック少尉は、容赦なく照りつける太陽を睨みつけた。

 じんわりと額に浮いた汗が、一筋流れ顎を伝い落ちる。太陽の色の髪は汗で湿り、空色の瞳は色素の薄さ故、照りつける太陽光に耐えきれずすぐに伏してしまった。

 
ーーあー…大佐が足んねー。冬は良かったなぁ。どんなに引っ付いても文句言われなかったし。寧ろ「犬はやはり体温が高いな」何て憎まれ口を叩きながらも喜んでいた(に違いない)し。それが何だ!暖かくなってきたら途端に邪険にしやがって。この間なんてついに「近くにいるだけで暑い!半径2メートル以内に近寄るな!」とまで言い出す始末だ。2メートルじゃ手も届かねえっつーの!触れねえじゃん!そのくせ汗で肌に張りついたシャツ一枚の姿になろうとするし!透けてるから!ヤバいから、それ!第3ボタンまで外すのも駄目!普段キッチリ着込んでいるだけにちょっと露出度上がっただけでスッゲエ攻撃力アップだから!あの人あの格好で外歩き回るつもりだったのか?!歩くエロマシーンだよ!つか、何回か司令部内歩き回っちゃってたし!みんなで諫めて必死で止めて無理矢理上着着せてボタンもとめて何とか暴挙を止めたけど、それが癪にさわったのか、俺の立ち入り禁止範囲が「半径3メートル以内」に拡大されてしまった。しかも「お前の髪や瞳の色は真夏を思い起こさせて暑苦しい!」なんて無茶苦茶言い出して、視線すら合わせてくんないし!チキショー…夏なんて……っ!



 
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