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□貴女が心配で仕方がない
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「はぁ…貴女と言うお方は、」

「…光色さん?」

眉尻を下げ潤んだ瞳で此方を見やるお市殿。
そんな彼女から少し視線を下に逸らせば、少しやつれた部下が片膝を付いて頭を垂れていた。

「も、申し訳ございません家康様!我等が少し目を離した隙にお市様が城を抜け出してしまわれて」

頭を下げて謝罪する部下に家康は人知れず溜め息を漏らした。

…このやり取りもかれこれ何度目だろうか。


「…いや、構わんよ。ご苦労だった」

そう言って部下を労い下がらせて、家康はまた市へと視線を戻す。




全く、本当にこれで何度目だろうか。屍が至る所に横たわり眠るこの戦場(いくさば)に付いていらっしゃるのは。幾ら危険だからと諭せども聞き入れては下さらない。部下に護衛を頼んでいても、それをかいくぐり付いていらしてしまう。

己の側にいたいと、愛しい女子に懇願されては男であれば誰であろうとその頼みを無碍には出来ないだろう。

そうして戦場にお市殿を留め置いては、邪魔にならぬようにと必死に戦い傷つく彼女の姿に、幾度胸が締め付けられた事か。


「お市殿、此処は危険なところだ。貴女のような方が来るべき所ではない」

「いや…嫌よ。…私は、平気。だって、私も…戦えるもの」

「そう言うことを言っているんじゃ無いんだ!お市殿は、もう…もう戦う必要なんて無い。だから、城でワシの帰りを待っていてはくれんか?お市殿が待っていてくれる事がワシの力になる」


幼子に言い聞かせるようにそう言って、市の肩をそっと掴み目を合わせる。少し泣いたせいなのか、彼女の目元はほんのりと赤かった。


「市は、ひとりぼっちは…もう嫌なの。お願い。…いい子にするから、市を連れて行って?」

着物の袂をきゅっと握り自身に縋り付く市に家康は悲しげに眉を寄せた。お市殿は孤独を極度に怖がっておられる。一人になるくらいなら死さえ厭わないほどに。

それがワシは怖かった。いつかお市殿が己の目の前から消え失せてしまいそうで…恐ろしかった。
「お市殿っ…」

家康はそんなか細く儚い市の身体をそっと抱き締める事しか出来なかった。

「…頼むから、ワシの側から離れないでくれ」

「市は、市はずっと…。光色さんと一緒よ?」




貴女が心配で仕方がない
(今にも消えてしまいそうな、儚い貴女が。心配で仕方がないんだ)





――――――――

久しぶりに小説を書きましたので、グダグダですね…。

そして暫くの間更新出来ないことをお詫びいたします。


政市も好きですが、家市も大好きです!家康は市にデレデレの甘甘位がいいですね!!←
何処かに夫婦設定の小説とか無いでしょうか…


執筆日:10月4日

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