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□幸せって、温かいもの
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初めてだった。
アイツを…ねねを越えてしまうような想いを抱いたのは。これまで会ったどんな女よりも、惹かれてしまう。心から…彼女に恋い焦がれてしまった。



「…慶次?」

「ぅえ?ど、どどどうしたんだい?」

「ううん…何でも、ないよ」


言葉にしない代わりとでも言う様に。隣に座る市がもたれかかるように寄り添ってくる。彼女の温かな温もりが、触れ合う場所から伝染するかの様に伝わってきて、ただそれだけの事なのに、慶次は顔が熱を持ってしまうのが分かった。

おかげで、いつもなら詰まることのない会話でもしくじってしまった。情けない、本当に。彼女に見つめられただけで、心の奥底が激しく脈を打つなんて。恋を初めて知った子供の気分だ。


もう彼女以外の事は何も考えられない。
そんなどうしようもないほど、彼女に惚れ込んでしまっていた。


「あっあのさ!市ちゃんは花って好きかい?」

唐突な質問だったと思う。彼女の綺麗な漆黒の瞳を見つめていれば、気付けば口がそう言葉を発していた。

「うん…好き、だよ」

「な、ならこの花…受け取ってくれないかな?越後の軍神とこで譲って貰ったんだ」

今まで市にバレぬように隠し持っていた花を市の小さい手の平にそっとのせる。市はその花を指先でそっと撫で、そっと匂いを嗅いでみる。ふわりと優しい花の薫りがした。


「…ありがとう、すごく…嬉しい」

「いいっていいって!礼なんていらないよ!そんなに喜んでくれるなら俺もあげたかいがあるってもんだしさ」

嬉しそうに、花を持って愛らしく微笑む市に慶次もつられて笑った。

彼女と過ごすこの一時が何よりも慶次は好きだ。友との語らいよりも、喧嘩よりも、勿論大好きな祭よりも、他の全ての事よりも。いつだって彼女の事を考え、想っていた。そうして市の傍らにいる事で慶次はいつも幸せを感じていた。



だから、


「慶次は、いつも…市に幸せを、くれるのに。市は、何も…返せない」

そう言って儚い微笑みを浮かべる市を抱きしめずには居られなかった。
いつも幸せを貰っているのは俺の方なのに。お願いだからそんな事はいうなと、ぎゅっとでも優しく力を込めて彼女を抱き締める。


「いつも、幸せを貰ってるのは俺の方だ。だってさ、市の隣にこうして居られるだけで幸せだから」

そう言ってまた腕に力を込めると。彼女の細い腕がゆっくりと背中に回されたのが分かった。ぎゅっとしがみつくようにして、市が抱き付いてくる事が凄く嬉しくて、また彼女をぎゅっと抱き締める。

「く、くすぐったい」

「ははっごめんごめん。あんまりにも嬉しくってつい。……市、俺に幸せをくれてありがとう」

「市も…ありがとう」

そう言って市も嬉しそうに微笑みながら強く慶次に抱き付いた。互いの温もりを感じるように、ぎゅっと強く。

「ねぇ、慶次?…幸せって、すごく…温かいね」









幸せって温かいもの
(だって…ほら。こんなにも、温かいの)



――――――――

ご、ごめんなさーい。
慶次が似非に!
悲惨な事に!
短いくせにぐだぐだですよー!

アンケートに慶市を見つけたので初チャレンジしてみれば…このざまか!

見事に管理人の力量不足で御座います。

執筆日:8月6日

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