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□このまま時が止まればいい
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月夜が自分の存在を示すかのように綺麗に輝いている。そんな景色を見ながら、市は隣に腰掛ける政宗にしなだれた。彼の温もりを体で感じながらその腕に自身の腕を絡ませる。

「政宗様…」

普段は余り甘える事のない彼女のこの行動に政宗は優しく微笑んだ。隣に寄り添う政宗の肩に、彼女の頭がそっと遠慮がちに寄りかかる。と同時に男にしては余りごつごつし過ぎていない逞しい腕が彼女の腰をぐいっと自身の方へ引き寄せた。そうして少しの隙間もなく寄り添う。

「遠慮するこたぁねぇ…何ならこっちにくるか?」

ぽんぽんと自身の膝を叩く政宗の姿に市はくすりと嬉しそうに笑みをこぼす。

「…いっても、いいの?市…重いよ?」

「Ha…そんな事は関係ねぇよ。Come on!」

「ありがとう…政宗様」

そうして感じる市の温もりを政宗は後ろからぎゅっと抱き締めた。細くて今にも壊れてしまいそうな愛しい彼女を壊さぬように出来るだけ優しく、それでいて離れぬように少しだけ強めに。そして彼女の首元へ顔を埋め深く呼吸した。途端に市自身から薫る、香ではない優しくて甘い様な香りにくらくらと眩暈がする。そんな今にも理性という枷を外してしまいそうな己に苦笑して。


「…俺的にはこっちの方が好みだ」

それを誤魔化すように市の向きを顔合わせになるようにかえて、そっとまた彼女を抱き締めた。そしてそれに応えるように自身にすがりつく市に、堪えようもないほどの愛しさがこみ上げる。






暫くの間そうして流れる時間に身を委ねていると。己の胸板に頬を擦り寄せるようにして甘えていた市が、顔を上げ此方を見つめていた。

「ねぇ…政宗様?」

「ah…どうした?」

「市、ね?政宗様と…接吻したい、の」

頬をうっすらと赤く染め戸惑いがちに告げられたその可愛らしいお願いに、政宗はどくんっと心臓を高鳴らせた。まさか彼女の口からこんな言葉が出てくるとは思いも寄らなかった。その分衝撃は倍増で。理性の糸を引きちぎろうとずっと騒いでいた獣がここぞとばかりに暴れ出す。

「(…駄目だ。今口づけると何しでかすかわからねぇ)」

今口づけすると危ないかもしれない。そんな理性的思考が政宗が市に口づけることを引き留めていた。絶対に危険過ぎる。彼女を壊しかねないし、怯えさせるかもしれない。しかし、そんな思考を保っていたのも此処までだった。

「ん…」

己の唇に柔らかい彼女のそれが重なる。奥手な彼女からの口づけにぷつんと何かが切れる音がした。



「…っ市!」

「んっ…んぅ…政宗、さまぁ…んぁ」

甘い囁きと共に降ってくる激しい口づけに市の体は痺れたように動かなくなる。待ち望んでいた政宗からの口づけに市の心は満たされていく。止むどころかより激しくなってゆく口づけに市は政宗の衣をぎゅっと掴んで必死にそれを甘受する。くちゅくちゅと濡れた音を発てて咥内で蠢く舌に自身の舌を絡めれば、それに応えるように彼の舌も絡んできた。

呼吸はまま成らず、漏れでる声に唇から流れ落ちる二人の唾液。苦しさからか、市の瞳から流れ落ちる涙を頬を撫でながら優しく拭う政宗の手。



「んぁっ…」

そろそろ息が苦しくなってきた頃、漸く政宗の唇が市のそれから離れていった。二人を繋ぐ銀色の糸がぷつりと切れる。

「…悪い、市。Are you all light?」

「謝らないで、政宗様。市は…大丈夫、だよ?」

そう言ってまた政宗の胸板に頬を擦り寄せ甘える市に応えるようにぎゅっとその細く柔らかい体を抱き締めた。

「愛してる…市」

「私も、政宗様を愛してる」




このまま時が止まればいい
(そうすればずっとこうしていられるのに)




―――――――

やってしまった。
アンケートにて甘が読みたいとあったので頑張ったところ…甘を通り越してしまった気が。

あれ?甘ってこんなのだったっけ?な感じです(笑)


初めてここまでイチャイチャしてる政宗様達を書きました…。

ではアンケート、コメント頂きありがとうございました!
これからもアンケートを参考に更新していきますので、何卒宜しくお願いします。


執筆日:7月8日

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