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□ほんとはね?
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「Hey!Honey…待たせたな!」

「ううん…大丈夫。市、全然待ってない…よ?」

そう言って首を傾げる市の目の前に現れたのは、愛馬の手綱を引っ張りながら、彼女の近くへ歩いてくる奥州の覇者―独眼竜―伊達政宗その人だった。彼は手頃な木に手綱を括り付け市の近くに腰掛けた。


月に三度、彼女たちはこの魔王の城近くの森で、ひっそりと誰にも知られずに逢瀬を楽しんでいるのだ。誰も知らない、あの信長でさえも知らない…二人だけの秘密だ。


「そうか?…ってHoneyの手、凄い冷てぇじゃねえか!!」

「…政宗様の手、温かいね。温かくて…気持ちいい」

「俺の手がHotなんじゃねぇ!Honeyの手が冷た過ぎんだよ」


そう言って市の冷たく冷え切っている両の手を包み込むようにして握り、少しでも温まるようにとその手をさすった。

己の熱が少しでも彼女に伝わるように、優しく壊れ物を扱うように撫でたりさすったりを繰り返す。

そしてどちらとも話さないまま暫くその動作を繰り返していると。
ひんやりとした彼女の手が、己の熱を吸収するかの様にして段々と温まっていくのが分かった。

一先ずはこれて安心だと、政宗は今まで閉じていた口を開く。


「I'm sorry.俺がもっと早く来れなかったからだ」


目を伏せ暗い陰を落とす政宗に、市は慌てて彼の手を自らつかんで否定する。自分が約束の刻限まで待ちきれずに早く来てしまった性なのに、彼の性ではないのに。市の頭にはその事が次々に思い浮かんできていた。


「そんなことない……謝らないで。市、政宗様と…こうしていられて、嬉しいよ?」

「嬉しいこと言ってくれんじゃねぇか!A lot of Thanks,Honey!!」

「きゃっ!」

政宗は本当に嬉しそうに口元を緩めると、握り締めていた手を引っ張って市を己の腕の中に閉じ込めた。少しの間も離れるのは惜しいというかの様に互いの体を密着させる。


彼の厚い胸板にくっつく様にして抱かれている市は、己の鼓動が高まるのを感じて頬を赤く染め上げた。


「は、恥ずかしい…」

「So cute!それぐらいで照れんなHoney」


そう言って市の艶やかな長い黒髪を梳くように愛おしむように撫でつける。そのくすぐったさに市は少し身じろいだ。




「……ねぇ政宗様?実は市、御願いがあるの」

「What?Honeyの頼みなら何でも聞いてやるぜ?言ってみろ」

「あの、ね」


ほんとはね?
ちゃんと、名前で呼んで欲しいの
(はにーじゃなくて市がいい)(…Okey!市)(これからも、市って…呼んでね?)




―――――――
市の政宗の呼び方悩みました…

長政は長政様だから政宗だと政宗様?という単純思考(笑)

執筆日:3月31日

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