Cosmo-Chaos
□渇きを癒す〜蟹・山羊・魚〜
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シンデレラの魔法が解ける時間。
騒がしい若者の溜まる道を過ぎて、デスマスクは細い路地を折れた。
重たいドアを開くと、広がるのは煙草を吸っている、いないに関わらず、少し煙臭い空間。
入口側のカップルが好奇の目を向ける。
長身で、銀髪の外国人。
赤い目はコンタクトレンズで隠しているが十分に目立つ外見だ。
カップルから席を空け、1番奥のスツールに腰をかける。
「ジントニックを」
完璧な日本語発音。
下手な英語や、やたら間延びした日本語でのやりとりには、ウンザリしていた。
「かしこまりました」
グラスの縁を、くるりと一周して、スクイズされたライムが落とされる。
バースプーンがグラスの中で踊り、ジントニックが出てきた。
口を付ける直前に、ふわりとライムが鼻をくすぐる。
『はずれじゃねぇな』
酒や料理にうるさいデスマスクは、合格点のものに出会うだけで幸せを感じる。
一息で半分飲み干し、ふぅっと息をついた。
上げた目線を棚に這わせる。
軽いカクテルを1、2杯飲んだら強い酒が欲しい。
ジントニックが残り一口になった時、心地よく淀んだ空間を、新鮮な闇が掻き回した。
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