Cosmo-Chaos

□渇きを癒す〜蟹・山羊・魚〜
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闇に混じって流れ込んできた華やかな香り。
心なしか明度を増した店。

「お待たせ」

アフロディーテはデスマスクの隣のスツールに掛けると肩を軽く叩いた。

「いま来たところだ。」

このバーを待ち合わせに指定したアフロディーテは、ちらりと棚を見回してから近くに立つバーテンダーに目線を止めた。

「ベルべデールのロック。レモンもライムもナシ」

注文を終えると、僅かな光を吸い込み何倍にも増幅させて輝く髪を無造作にまとめた。

薄紫色をした、宝石をあしらった様な瓶からトロリと冷えたウォッカが流れ、氷を伝い落ちる。

バースプーンと氷が静かに回転し、冷たく輝くグラスがアフロディーテの前に置かれた。

「ああ、美味しい。今日ずっと飲みたかったんだ。」

「アル中かよ、いきなりロックなんざ」

「グリーンランドは寒いんだ。南の君にはわかるまい」

続いて二口目を口に含むアフロディーテ。
唇を撫でる冷たさと、舌の上を染める熱。
官能的で、うっとりする。


タイプが違う、容姿の良い外国人にカップルの女性がそわそわし始めて、男性がチェックを申し付けた。

5m先で繰り広げられる物語には目もくれず、今日あった仕事の軽口を叩くデスマスクとアフロディーテ。

「あいつ、遅くないか?」

ジントニックから、日本には珍しいオパール・ネラに切り替えたデスマスクが、ふと呟く。

「おおかた、報告書でも書いているんだろう。サガは明日でいいと言ってくれたのに」

くすくすと笑って、アフロディーテはオイルサーディンを注文した。

カップルが身支度を終えて立ち上がった。
人の動きに、デスマスクとアフロディーテも視線を向ける。

ちらり、と名残惜しそうに二人をみた女性と目が合う。




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