海路
□神のみぞ知る【ウサビ】
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「えへへ、I love youか♪」
夜になってもまだその言葉を呟く隣人にいい加減耐え難いウザさを感じ始めるキレネンコ。
紅い瞳を夜闇に向けて、今日で何回目かの溜め息をついた。
そして。
昔に途絶えたはずの熱が。
再発するのを感じた。
「はぁ・・・」
自分自身に呆れ果てたように息を吐いて。
自分で抜いてしまおうかと考えた時。
ふと隣に丁度良い奴が居る事に気がついた。
男とは経験済みだ。
処理程度にはなるだろう。
「おい」
低く、重みのある声がビリビリと夜の冷たい独房に響いた。
「何ですか?」
それに対比する、柔らかく暖かな声。
少し眠そうで火照る顔。
ぽってりと色香の艶を含んだあの桃色の唇。
ヒクッと下半身が疼く。
「来い」
ただ一言。
奴もそこまで馬鹿ではない。
それを聞いて毛布を体に巻きつけながらやって来た。
そういえば時は冬。
寒いのか、震えている。
「ネンコさん?」
首を傾げて、顔に触れようとするその手を掴み。
自身のベットの中に引きずり込んだ。
「むほぅ!!」
色気の無い声だ。
しかし、触れた身体の柔らかさは男のそれとは思えない。
寧ろ女のようだ。
マウントを取る。
今だ呆然と何が何だか分からない、と言う顔をしている隣人。
あぁ止めてくれ。
そんな顔をされると泣かせたくなる。
と、思った時に少し思いついたことが有り。
そっと耳元で呟いた。
意地悪く。
腹の底に響くイヤらしいテノールで。
「お前・・・処女か?」
途端。
顔を真っ赤にして、これから行われる事を理解するプーチン。
逃げ出そうとするが、そうはさせない。
ギュッと身体を密着させ、動きの自由を奪う。
元々力関係ではこっちが上だ。
すると彼は諦めたのか抵抗を止め。
目尻に涙を浮かべて。
そして。
小さく先ほどの問いに答えた。
「・・・ハイ」
キレネンコは。
口元に微かに笑みを浮かべ。
白く柔らかな彼の鎖骨に噛み付いた。