海路
□紅い色【ウサビ】
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とりあえず、気絶している看守さんを気にしながら僕はベッドの上にトランクを置く。
そういえばトランクの中に絆創膏とシップがあったはずだ。
僕は直ぐにトランクを開けると小さなシップを2〜3枚取り出して看守さんに近づく。
すると。
「何する気だ」
と、少し苛立った様な声が聞こえた。
振り向かなくたって分かる。
キレネンコがそう言ったって事ぐらい。
「え・・・あ・・・」
普通だったら。
「怪我しているのでシップでも貼ってあげようかと」
と、言える所だ。
しかし。
何故だかその声には返答が詰まってしまった。
言葉では表現できない威圧感と言うものが口を塞いでしまっている。
例えるなら。
“恐怖”だろうか・・・。
「何する気だ」
今度は強めに言われる。
僕はキレネンコの顔を恐る恐る見ると。
眉間に少し皺が寄り、鋭い眼光で僕を睨んでいた。
“ヤバイ、今マジ泣きそう”
引きつった笑顔をしているのが良くわかる。
僕が泣きそうになる時は必ず苦笑するって先輩達がよく言っていた。
って、そんな事思ってる場合じゃないよ僕。