海路
□追憶の時間【ウサビ】
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外では遠雷が鳴っていた。
しかし鉄格子の窓の外は穏やかな夕暮れで、遠くとも近い地との隔たりをプーチンは感じていた。
『あっちは孤児院のほうだ・・・』
遠雷の彼方。
薄く暗雲がかかる場所に目をやれば、昔自分が居た孤児院を思い出す。
『マザー・ライノ・・・』
目を伏せて、記憶の中の母親を思い出す。
生みの親ではなく、育ての親を。
『そういえば、マザーが僕を拾ったのは黄昏時で正門の前に捨てられていたんだっけ・・・』
静かに。
静かに目を閉じる。
追憶の世界に入ると、不思議と周りの音は消え。
肌寒い感覚だけがその場に残った。
紅い紅い夕暮れの日。
僕は血の繋がった親に捨てられた。