海路

□神のみぞ知る【ウサビ】
1ページ/4ページ

神のみぞ知る。

英語で言うとGod knowsだ。

第二次世界大戦時の落し物である、プーチンのような戦争孤児にマザーライノが教えてくれた唯一の英語である。

人間は毎日5億の事を記憶して4億9千の事を忘れるが、プーチンは如何なる時もこの言葉を忘れなかった。

神聖的で。
残酷なこの言葉を。

「Got knows・・・か」

手に持っている角砂糖を眺めながらポツリと呟く。

すると正面でスニーカーを磨いていたキレネンコが横目でプーチンを見た。

プーチンは少しバツが悪そうな顔をして頭を掻く。
それが分からない、と言いたげな目をした後、キレネンコはボソリと呟いた。

「・・・神のみぞ知る・・・」

緑の瞳が輝いたのを、彼は見逃さなかった。

「すごぅい!ネンコさん英語できるんですね!!!」

うざったいな・・・。
と、キレネンコが言ったか言わなかったかはいいとして。
興味を持ったプーチンを止めるのには骨が折れる。

普通の関係。

とはもう言えなくなった2人なので、遠慮なく緑は色々聞いてくるようになった。

仕方ないので。
付き合うことに。

「少しな、ガキの頃から齧った程度だ」

そっけなく返しても、彼は挫けない。
まだ情報を聞き出せないかと言うように、キラキラした目で見つめてくるのでたまったもんじゃない。

軽く溜め息をついて。
キレネンコはボソボソと話し始めた。

「基本的に、“I”が自分“You”がお前を指す・・・もし、お前が俺に英語で愛してると伝えたい場合は・・・“I love you”で米人には通じるはずだ」

頬を真っ赤にさせて新しい知識を嬉しそうに吸収するプーチン。

他には他には!?
と言いたげな顔を見て、ポツリと呟く。

「“I Hate you”」

それは自分を好きで言ってくれたのかな?
と、勘違いする馬鹿をほおって置いて彼はまた雑誌に意識を戻した。



何時もだったら。



無視するはずの存在。



だが何故かその異国の言葉が。



妙に自分をひきつけた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ