海路
□気付く時間【ウサビ】
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プーチンが来てから、キレネンコは大人しくなった気がする。
と、イワンがそう呟いていたのをとうの本人は聞いていた。
超人的な肉体の持ち主なら聴力も凄まじくよかった。
だから鉄扉の向こうで弟達と話しているイワンの声を聞き取ることが出来た。
しかし。
やはりキレネンコにとって、隣人のプーチンが増えたという事も気にはしていないし。
イワンが何故そう確信とまではいかないが大人しくなった、と言ったのも気にしていない。
とりあえず、全てにおいて無関心。
最初、プーチンが入獄して来た時には少しの好奇心で話したりはしていた。
だがそれはたった半日ももたずに飽きられてしまいココ3週間、会話もしていない。
しかしプーチンは別段気にはしていないようで。
「お早う御座います」
「今日のご飯はなんでしょうね?」
「おやつもつくんでしょうか?」
「今日も美味しかったですね」
「じゃあおやすみなさい」
と、キレネンコに問うように聞いてきても返事がないと自覚しているのか、言ったら言ったでニコニコ笑ってそこに居るのだった。
キレネンコにとっては彼は居ても居なくてもいい存在、というより少しは居て欲しい存在だった。
彼は基本自分の生活ペースを乱されないなら、来る者は拒まずな性格。
しかも偶に身の回りの整理もしてくれるので。
綺麗好きの彼にとって、同じく綺麗好き、というより整理整頓好きの隣人は何かと利益をもたらしてくれる有益な部下として見ていた。
髪が左右おかしく伸びてしまったときには切り揃えて。
シャワー後のドライアーも彼がしてくれる。
部下・・・というより家政婦だろうか?
いや、家政婦というより・・・。
「うくっ・・・」
キレネンコは行き成り喉に何かを詰まらせたような声を出したのでプーチンは直ぐに駆け寄り心配そうに彼の顔を見つめた。
その顔を金色の目で見つめ返すと。
1人の男の顔が重なった。
かつて死んだはずの。
自分の弟の・・・。