海路

□紅い色【ウサビ】
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「看守さん、痛そうじゃないですか、えっと・・・だからせめて少しでもえっと・・・えぇっと・・・」

もううわぁぁぁぁ!!!
初めは綺麗だと思ったのに今は物凄く怖い!
子供でもいえる内容なのにうわぁどうしよう、こんなんじゃ伝わらないよぉ!!
と、心の中で暴れている僕。
すると、スッと眉間の皺を消したキレネンコは、この狭い監獄でも聞き取れるかどうかの声で僕に問いかけてきた。

「痛い、って何だ?」
「・・・え?」
「痛み、って何だ?」

一瞬質問の意味が分からずに、間抜けた声を出した僕。
何故そんな事を僕に訊くのだろう。
顔にある継ぎ接ぎを見て、僕は静かに言った。

「その・・・継ぎ接ぎ・・・」
「・・・」
「事故にあったのなら、痛みを覚えてるはずでは?」
「事故・・・あぁ、アレを事故と呼べるか・・・」

ふいに遠くを見つめるキレネンコ。
小さな窓から差す木漏れ日が、彼の顔を優しく撫でた。
過去を語る口調で、ボソリ、ボソリと何かを呟くが、これは外を走るラーダの音にかき消され聞こえなかった。

「キレ・・・ネンコさん」

僕は彼の名前を呼んだ。
すると、何故知っている?と言うような顔で僕を見た。
僕は尻込みする。
やば、ホントに泣きそ・・・。
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