短編小説文
□手をつないで
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俺、高橋稔(ミノル)は今日から始まる3泊4日のこの修学旅行をめちゃくちゃ楽しみにしてた。
高校生活最高の思い出を作ろうと、入学当時から仲の良い翔太と共に、新しいボストンを買いに行ったくらいだ。
それなのに、4日間のほとんどを一緒に過ごす班メンバーの中に、俺が絶対に一緒になりたくなかった男がいる。
そいつが遠藤誠二(セイジ)。
体育会系でサッカー部スタメンの俺とは正反対な、優等生メガネ野郎。
かすり傷一つなさそうな白い肌に、ホントに男かってくらい細い身体。
加えて性格は最悪。
俺とは絶対合わないタイプの男だ。
修学旅行だけはコイツと同じ班になっちゃいけねぇって決めていたのに。
俺がこの前風邪こじらせて1日だけ学校を休んだ日に、運悪く班決めがあったのだ。
俺と翔太は決まっていたも同然だったんだけど、2人じゃさすがに寂しいし。
だから3人でいた遠藤達に声をかけて5人グループにしたらしい。
(翔太談)
俺は遠藤が嫌いだけど翔太はそうでもないみたいだからな。
「稔ー?何ボーッとしてんの?」
翔太の声にハッと我に返る。
秋の柔らかな陽射しが入る新幹線の中で、俺達はトランプをして時間を潰していた。
目の前で翔太が怪訝そうな顔をしている。
「悪ィ」
俺は渇いた笑みを浮かべながら、隣に座る清水の手からカードを引いた。
「………」
…ジョーカー。
涼しい顔して清水がチラリと俺を見る。
「………」
くっそー、絶対負けね!!
俺のカードを引くのは遠藤だ。
コイツにジョーカー渡してやろう。
真ん中を狙う事が多い遠藤。
俺はど真ん中にジョーカーを混ぜ、遠藤がそれを引くのを待った。
トランプやってもクールに無表情を貫くコイツには、ポーカーが一番適しているんじゃないだろうか。