短編小説文
□reunite
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「でも…」
昌介が口を開く。
「榛葉様の家臣に、農民である竜がなるには…、榛葉の養子にならないといけないんじゃない…?」
「……!」
昌介の言葉に、竜の笑顔も少し寂しいものになった。
「…うん、そうなんだよな」
「…………」
「そりゃ、家族と離れんのは寂しいけど…給金が貰えるし、そしたら家に送ってあげられる」
「竜…」
「なんだよ、喜べって、…昌介」
表情の晴れない昌介の肩を叩いて、竜が笑う。
昌介はうつ向いて衣の裾を握っていた。
「昌介」
竜は昌介の肩にあった手を引いて、その身体を抱き寄せた。
身長はさほど変わらないのに、昌介の女の様な細さに竜は思わず力を込める。
「竜…」
抱きしめられた昌介は瞳を閉じてその温もりを感じた。
あたたかい体温は、いつも安らぎを感じる。
「そんな顔するなよな。…確かに今みたいにすぐに会える事は出来なくなるけど…」
「……」
「俺はどこに行っても、お前の事を想ってるから。な?心配すんな」
「…でも、寂しい」
「昌介…」
「…竜がいなきゃ…俺は…」
昌介が顔を上げた。
潤んだ黒い瞳が、真っ直ぐに竜を見つめる。
竜はそれを愛しそうに眺めると、昌介の唇にそっと自分のを重ねた。
竜の一つに結んだ長い髪が、さらり…と昌介の頬に触れる。
「──…」
「…昌介」
唇を離し、竜が言った。
「武士になったら…俺は本当の意味でお前を守ってやれる。力も、地位もある一人前の男になれる。そしたら俺は堂々と昌介を貰えるだろ?…俺はそれが嬉しいんだ」
言いながら、竜はさわさわとそよぐ秋風に乱された昌介の前髪を、優しく手で直した。
「……っ」
ぎゅっ…と昌介が竜に抱きついた。
竜は微笑むと、その身体を抱き返す。
しばらく沈黙が続いて、風に揺れる草の音がその場を包んだ。