サイドストーリー

□行きは友達、帰りは恋人?
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「兄貴ー、ケータイ鳴ってるよー」
「あぁ?」

曇りガラスの向こうから聞こえた弟の声に、風呂で寛いでいた岡野は怪訝そうに声を上げた。
確かに着信を知らせる音が聞こえる。

「メールだろ?ほっといていいぜ。後で見るから」
「電話っぽいよ?…つかメールと電話の着メロくらい変えろよ…」
「うるせーな。ほっとけよ。大切な用事ならまた掛かってくんだろ」
「適当だなぁ。ホントにいいの?"日向"って人からだけど。この人友達だろー?」
「……………」
日向って…。
岡野はガラス越しに自分のケータイを凝視すると、諦めたように扉を開けた。
「あ、開けた」
「…ったく、何の用だよアイツ。あぁ、電話サンキュ。もういいぜ、孝平」
「はいはーい。間違っても風呂の中に落とすなよ」
「そんなドジじゃねぇよ」

生意気な口をきくようになった弟の背に言葉を吐き捨て、岡野はケータイを手に扉を閉めた。











《行きは友達,帰りは恋人?》














「何の用ですか」
『開口一番それかよ。機嫌悪いな』
電話の向こうで日向が苦笑した。
岡野はムッと唇を尖らせる。
「風呂入ってたのに、電話かけてくるお前が悪い」
『え?風呂入ってたのか?何だよ、じゃあわざわざ出なくても後でかけ直してくれりゃいいのに』
「……………」
確かにそうなのだが。
でもそんな事したらお前にナニされるかわかんねーだろっ、という言葉を岡野はぐっと飲み込んだ。

「電話代がもったいねーからな」
『…あー、そうだな。そういうことな』
「で?何だよ。電話なんかして」
『あぁ、お前にイイコト教えてやろうと思って』
「…イイコト…?」
あからさまに顔をしかめる。
するとそれが伝わったのか、日向がくすくすと笑った。
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