サイドストーリー

□夕暮れ
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─小さい頃からいつもそうだった。

白い肌にまつげの長い空色の瞳。
加えて華奢な身体。

それが目立つのか、男子達にはいつも冷やかされていた。
女子みたいな容姿ではあるけれど、本質は男子なのだから女子のグループに入る訳にもいかず、学校ではどっちつかずの外れ者。

小さい頃から小学校を卒業するまで、ずっとそんな日々が続いていたのだ。

中学校に入学するまでは──




   《夕暮れ》



「日野小学校から来ました。泉暁(いずみあきら)です。これからよろしくお願いします」

相賀中学1年3組。
春の陽射しが柔らかに差し込む教室で、暁は自己紹介をした。

案の定、周りからはこそこそと声が聞こえる。
“カワイーイ、女の子みたい”
“あれで男なのかよ”
今まで何度も聞いたようなセリフ。
(…はぁ…またか、まぁ予想はしてたけどさ…)
暁は溜め息をつきながら席についた。
担任が次の生徒を指名している。

暁は他の生徒の自己紹介は聞かずに、頬杖をついて窓の外を眺めた。

3・4月は桜でいっぱいな学校を想像するが、実際この中学には数本の桜の木が、校庭の入口にあるだけだ。

(また…つまんない学校生活が始まるのか)

今まで友達と言えるものを持った事が無い暁は、冷めた瞳で教室内を見回した。

そこにいる男子達は、まだ幼さは残るものの、確実に『男らしく』成長している。

はぁ…と、暁はまた小さく溜め息をついた。
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