長編小説

□†Perfect PartnerX
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■19


「そう無愛想な顔をするんじゃない、リュオン」

ナイフとフォークを器用に操りながら、恰幅の良い男が笑った。

レージェンのローラン邸。
見た目にも美しい料理が並ぶテーブルを、リュオンと、その父ゼルトが向かい合っている。
ゼルトの両脇で美女が2人夕食の席を共にしていて、時折ちらちらとリュオンに色目を使っていた。

そんな熱い視線をさらりと交わしながら、リュオンは黙々と食事をする。
そんな様子に、部屋の壁際で執事や侍女達が微かに苦笑していた。

「こうして食事をするのは久しぶりじゃないか。もっと楽しい顔をしたらどうだ」

「楽しいも何もありませんね、父上」

「まったく…お前は相変わらずだな。そんな態度では彼女達が怯えるだろう」

「……………」

父の言葉に思わず溜息をつく。
彼の傍で甘えたように声を出す女達は、怯えるどころか誘ってきているのだ。
つくづく父親の馬鹿さ加減には同情してしまう。

「父上、お遊びを止めるつもりはありませんがね…ですが節度というものを考えた方がいいですよ。あまり行き過ぎた戯れは、いずれご自分を追い込む結果となるでしょう」

「んん?何だ、心配してくれているのか?」

「心配ではなく忠告です。その時になって“助けてくれ”と泣きつかれても、俺達は何もしませんからね」

しれっとそんな事を言うリュオンに、美女達は少し苦い顔をした。
だが何故か父は笑みを浮かべている。
そうかそうかと頷きながら、手にしたパンを平らげた。

「シシルを思い出すぞ、リュオン。あいつもそんな事をいっつも私に言ってきた。“心配しているのか?”と聞くと、決まって“ご忠告申し上げているのです”と答えるんだ」

「……………」

突然出された母の名に、リュオンは顔を上げる。
ゼルトは当時の事を思い出しているのか、くっくっと笑っていた。

「お前は母っ子だったからな。気性も似たのだろう」

「父上が俺に構わなかったというのもありますが。まぁ、今更な話でしょう」

「はっはっは。確かに今更だがな。しかしお前はあいつの血をそのまま引いている。特にその銀髪と肌の色なんかな。その目はなんで青いのかよく分からんが」

「…………………」

目の色はシュウの血だからな、とリュオンは内心で呟いた。
この父は知らないが、自分はゼルトの血を一滴も継いでいないのだ。
似る訳が無い。
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