長編小説
□†Perfect PartnerW
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■13
「雄飛」
「ウィン!」
車に寄りかかりながら手を上げたウィンに雄飛は駆け寄った。
空はすっかり茜色だ。
「お疲れ」
「うん、残業にならなくてよかったよ。レティアは?」
「アイツはリー達つかまえて訓練の続きだってさ」
「よくやるなぁ。…あれ、そういえばアッシュ達に歩きで来てたって聞いたんけど…」
「一旦帰ったんだ。どっか食いに行こうかと思って」
「ウィンの奢りで?」
「当然です」
確信犯のようににっこりと笑った雄飛に苦笑しながら、ウィンは車に乗る様に促した。
「雄飛ー」
「!」
助手席側に回った時、アッシュが上から呼ぶ声が聞こえて、部署の方を見上げた。
部屋の明かりを背にアッシュがぶんぶんと手を振っている。
「また明日な!」
「おーっ」
雄飛も大きく手を振り返して、車のドアを開けた。
同時に運転席に座ろうとしていたウィンが笑う。
「あいつ、俺が来たときもああやってたぜ」
「アッシュらしいじゃん。アイツは盛り上げ役だから」
そんな事を会話しながら、ドアを閉めエンジンをかける。
ブオン…ッというサトリーの低い音は、聞いただけでこの車だと分かるくらいに何度も耳にした。
(そういえば、もう5年も乗ってるんだよな。…って言っても助手席だけど)
運転した事は無くとも、雄飛はウィンと同じくらいサトリーを愛しているつもりだ。
だが免許を取った身としては、やはり自分の車が欲しいと思う時もある。
(レオパード欲しいなぁ…、黒もいいけど、濃い紺色もカッコ良かったよなー)
前に見たテレビ番組を思い出す。
新しいデザインになったサトリークイーンにも心惹かれたが、自分の異名と同じ"豹"の名を持つ車が欲しかった。