長編小説

□†Perfect Partner
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パサリと軽い音を立てて、何かが落ちた。

手に取った本に挟まっていたのは数枚の写真だ。
幼い頃の自分。
そして懐かしい笑顔で笑う、自分より幾らか年下の少年。
忘れかけていた想いが、ふと胸の中に蘇った。

あの頃は込み上げる気持ちを"恋"だとは知らなくて、伝える事が出来ずにいた。
兄弟のように接しているだけで満足している自分がいたのも事実だ。
ただそれは、そんな時間がずっと続くと信じていたから。


しばらく会えない日が続き、募る想いを恋だと知った時には、彼はもうこの世にいなかった。


「───────……」

両親は彼の亡骸にも会わせてくれず、彼が眠っているはずの墓にも行かせてくれなかった。
ただ"死んだ"という事実を教えてくれただけだ。

子供だった自分には、そこに隠された理由など分かるはずもなく。
ただ漠然と彼の死を嘆き、今はその存在さえ記憶の彼方だった。

「………こんな所に…」

写真が挟まっていたのは父が好きだった物語の最終巻だ。
全ての写真に、死んだ彼と、彼の家族が写っている。
自分には捨てたと言ったくせに、こんな所に遺しておくなんて。


その父も、先日息を引き取った。
当主だった父の跡を長男である自分が継ぐ事になり、自分の物になるであろうこの書斎を整理していたのだ。

この家の名を、自分が背負う。
責任が大きい分、権力も相当なものになる。

「………馬鹿だな俺は。どうして忘れていたんだ…」

だったら。
もう子供ではないのだから。
手に入れた力で探してみようじゃないか。

好きだった少年の墓を。

そして伝えよう。
鍵をかけていた自分の心を。


「……ウィン…」


名を口にするだけで燃えるように疼く、今ここに甦りしこの気持ちを。
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