長編小説
□†Prismatic Hearts
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◆chapter1
暑い夏の陽射しの中、街はその気温に負けない程、熱く賑わっている。
ここはエイラーン大国の中でも、中心街の一つとされる文明の進んだ都市、ラキア。
企業通り、レストラン通り、ショッピングモール、娯楽施設、高級住宅街……雄飛とウィンの新しい居住地は、雄飛に言わせれば謂わば東京のような街だ。
そのラキアのマンション街にある高層マンション。
37階建ての35階に2人は住んでいる。
一際目立つ、楕円型のデザイン。リビングからはその形にそって円形に型どられた巨大なガラス窓から、街中を見渡す事が出来る。
「…まっ…待った」
広いリビングに、雄飛の焦った声が響いた。
「ウィン…ッ、俺…酒はダメ…っ…」
ウィンによって塞がれた唇から、透明の液体がこぼれ落ちる。
口内にひろがる強いアルコールの匂い。
「…んんッ…」
「どうだ?俺の愛酒の味は」
ごくん…と雄飛が液体を呑み込んだのを確認して、ウィンは口を離した。
ニヤリと笑う、明らかに遊んでいるウィンの表情。
雄飛は悔しそうに顔を赤らめ、ウィンに怒鳴った。
「どーすんだよ!明日は昇格式なんだぞ…俺…酒は全然ダメなのに、体調崩したらウィンのせいだからな」
すでにフラフラしだした雄飛の腰を抱くと、ウィンは楽しそうな表情をそのままに、雄飛に囁いた。
「心配すんな。俺が介抱してやるから」
「〜〜っ!」
頭がクラクラする。
身体も熱くて力が入らない。
けれど、それでもウィンを振りほどけない理由を雄飛は自分で解っていた。
酒のせいだけじゃない。
ウィンに抱いて欲しいから、口ではあんな事を言いつつも、この手を離せないのだ。
「……雄飛」
名前を呼ばれ抱かれた腕の中で、雄飛は少し照れながら、首を伸ばしウィンの頬にキスをした。
「…明日立てなくなったら、許さないからな」
「了解」
黒崎雄飛18歳。
ウィン=アルヴァーヘル21歳。
今宵も熱い、夜が始まろうとしていた─。