長編小説

□Perfect PartnerZ
2ページ/81ページ

■33


数時間前とは打って変わって暗い幽霊屋敷の様に見えるフェルランド邸の前で、ウィンの車からそう遠くない場所に1台の車が停まった。
黒い車体にラインの入った四駆。
ドアを開閉する音がして出てきたのは、同じ黒いコートを身に纏った、3人の警役人だ。
腕章が表す模様と文字は、ラキア中央警役所の隊員の証である。

「…真っ暗ね」

レティアの言葉にもう2人が頷いた。

リーとアッシュ、そしてレティア。
ウィンの部下であり雄飛の同僚である3人は、自らの上司と仲間を迎えにこのレヴァリアまではるばるやって来たのだ。

ウィンに雄飛、キアやリゼまで消えて行く様子を何も言わずに見ていたアッシュとレティアだが、しかしついに2人は、リーを半ば脅迫のように倉庫に押し込め、知っている事を全部話せと巻くし立てたのである。
2人の為にと黙っていたリーも、さすがに口にせざるを得なかった。
だが話を聞いて放心するアッシュを尻目に、レティアは動揺する事無く言い放ったのだ。

『危険が有る無いの問題じゃないわ。話を聞く限りグレンゼルツはれっきとした犯罪者よ。それを捕まえるのが私達の仕事でしょ。
アイル隊長に相談して、定休を前借りしに行くわよ!すぐにでもレヴァリアに行かなくちゃ』

有言実行。
レティアは男2人を引き連れて、ウィンの代わりに隊長を務めている2等尉のアイルのもとに向かい、簡潔に理由を話して定休日の前借りを頼み込んだのだ。
現最高指揮官であるサウジーに事件として出向くよう辞令が出されない限り、仕事の一旦として行くことが出来ない。
更には事件として認められる為には証拠や資料が必要となるから時間がかかる。
それを待ってはいられないのだ。

『駄目だ』

しかし当然の如く、アイルは首を横に振った。
部下を危険に晒す訳にはいかない、と断固として許可を出さないアイルに、3人は肩を落とした。
隊長命令に背く訳にはいかない。

『では、一緒に定休日を取って3人で仲良くお出かけなんてどうでしょう?』

そう声を掛けたのが、幻討隊隊長のフレイだった。
アイルに用があってそこに居たのだが、どうやら4人の会話を聞いていたらしい。

『その代わり、来月はお休み無しになってしまいますが。でも北の街に旅行なんて楽しそうじゃないですか。お土産お願いしますね』
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ