長編小説

□†Perfect PartnerY
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■28


真っ白な雪がひらひらと舞い降りて、雄飛の鼻先で消えた。

久しぶりに見た白銀の景色に思わず足を止める。
首に付いた鎖が、弾みでシャランと鳴った。


リュオンの邸宅があるレージェンから更に北の街、レヴァリア。
その南部─レヴァリア下部を支配するのがフェルランド家。
貴族の爵位の中で最も高位である「公」の地位を持つ一族である。

その本邸で、今日から大規模な社交会が開かれる事になっていた。

最高級の車がズラリと並び、見るからに裕福そうな老若男女が次々と門をくぐって行く。
雪を降らせる雲のせいでどんよりとした灰色が空を覆っていたが、フェルランド邸の周りはオレンジや白色の光で煌々としていた。

「止まるな、歩け」

そんな様子をぼおっと見ていた雄飛に、クレアードが鎖を引きながら言った。
無言で頷き、再び歩き出す。

正門を通り、玄関へと真っ直ぐに伸びる道を進み、段を上る。
開け放たれた玄関扉からは中の暖かさが感じられ、同時に賑やかな談笑も近くなった。

「ようこそいらっしゃいました。グレンゼルツの旦那様」

「あぁ、こちらこそ招待に感謝する」

会場に入った途端、両脇に並んだフェルランドの家臣達が歓迎の言葉を述べ、クレアードは紳士的とも言える微笑みでそれに応えた。

深みのある青地に、金と白の糸で施された見事な刺繍。
そしてグレンゼルツの紋章が入った正装を、クレアードは身に付けていた。
美しい金髪と整った顔の造りに加えて長身の彼は、否応なく他人の目を惹く。
そうなればクレアードの一歩後ろを歩く雄飛と、そしてラダにも視線が来るのは当然の事だった。

─見ろ、グレンゼルツ公爵だ。
─では後ろにいるのが…。

さわさわと、そんな言葉があちらこちらで流れる。

クレアードの正装と同じ色で作られた雄飛とラダの衣装。
ラダは護衛という名目で来ているのもあり少し軽装にはなっているが、クレアードの物に劣らぬ作りとなっていた。
対して雄飛の衣装はどこか女性的で柔らかだ。
下はスカートの様に長く、上着もゆったりとしたケープ。
けれど決して女の衣装に見えないのは、さすが職人の技なのだろう。

そしてもう1つ。
雄飛はケープと繋がった大きなフードを被せられていた。
顔を隠すように鼻と口元を布で覆っていたので、目しか見えない。
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