長編小説
□†Perfect Partner
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■1
外では雨が降っている。
窓や地に打ちつける激しい雨音が、室内にいても聞こえた。
星も月も無い真っ暗で冷たい夜。
こんな日に1人で眠るのは何だか怖くて、広い部屋を抜け出した。
目指すは兄の部屋。
あそこに行けば安心して眠る事が出来る。
何かと多忙な両親の代わりに、よく面倒を見てくれる兄が大好きだった。
その時だろうか。
階下から悲鳴と物が割れる音が響いてきた。
『…………!?』
思わず足を止めれば、少し先の扉から兄が飛び出してくる。
『何だ…!?』
珍しく険しい表情の兄が階下を覗き、自分のもとへ駆け寄って言った。
『危ないから、お前は部屋に戻りなさい』
『…やだ…!!』
首を振ってすがりつく。
『でも…』
『あ!!ウルフ様!!弟君も…!!』
息を切らした執事と女中頭が声を上げた。
『シンサ−、グロリア。一体何があったんだ?』
『盗賊ですわ!!早くこちらへ…!!』
『盗賊…!?』
兄が、腰にかけた剣を握りしめたのが見えた。
それからは必死に走った。
館にある隠し部屋に入り、両親や妹と合流して盗賊が去ってくれるのを待って。
だが願いも虚しく隠し部屋はすぐに見つかった。
地下に作られた巨大な部屋の中で、それから起こったのは血の惨劇。
執事に女中達。
両親に妹。
次々と盗賊の刃の餌食になっていく。
最期まで自分を守ってくれたのは兄だった。
その兄の身体を真っ赤な刃が貫いた時、どこかで冷静に死を覚悟した自分がいながら、実際は壊れたように悲鳴を上げていた。
『ぃやだぁあぁああァァッ!!』
身体に痛みが走った。
それでも声は止まらなくて。
ついには眼前に刃が向かってきて、"死ぬんだ"と、どこかで諦めながら、それでも叫んだ。
目の前が真っ暗になっても。